菅政権は震災復興財源のために国家公務員の給与1割カットを打ち出した。すでに総務省は課長以上10%、課長補佐・係長8%、ヒラ5%という削減幅を労組に提示した。賃下げで浮く3000億円を2次補正予算の財源に盛り込む方針だ。
石原慎太郎・東京都知事は、「国がやるなら都庁もやる」と呼応したが、政府には地方公務員の賃下げを決める権限はない。そこで財務省は自治体への地方交付税を削減して職員の給与を強制的に引き下げさせることを検討している。
公務員の給与カットに胸のすく思いの国民は多いはずだ。が、「ザマアミロ」ではすまない。この震災賃下げが契機となって、民間にも減給の波が押し寄せ、「給与カットの連鎖」が起きる危険性があるからだ。
経済評論家・奥村宏氏がこう指摘する。
「企業はいま、とにかく人件費削減を進めたい。日本経団連が2007年にホワイトカラーの残業代をゼロにできる制度の導入を働きかけたように、人件費削減を狙ってきた。今回の公務員の賃下げは、経営者が組合や社員に震災後の業績悪化を補うための賃金カットを求める口実になる」
大震災以後、客足が激減している東日本の観光地の観光業界団体役員が語る。
「宴会も減ったままだし、稼ぎ時の大型連休もパッタリでした。いつ従業員に賃下げを切り出そうかと考えていたが、国が範を示したからやりやすくなった」
製造業も震災による部品不足や夏の節電目標などで工場の操業率が低下しており、今期の業績大幅悪化が予測されている。大手から中小、零細企業まで広範囲に人件費削減が行なわれることを警戒しなければならない。
※週刊ポスト2011年6月3日号