【書評】 『日本の大復活はここから始まる! 目からウロコの経済成長論』
三橋貴明著・小学館・1365円(税込)
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日本経済を救うために必要なのは「構造改革」か「財政健全化」か、それとも「財政拡大」なのか。著者は、財政出動と金融緩和によってデフレ脱却をはかれとする財政拡大主義の立場に立つ。
〈世界経済は長い間インフレだったために、経済学はインフレへの対処を主な研究目標として発展してきたのだ〉
これまで経済学者はインフレ対策ばかり研究してきたという。しかし、今は1929年から始まった世界大恐慌以来のデフレだ。消費税増税も公共事業削減もTPPへの参加(貿易の自由化)もすべてインフレを抑える対策で、逆効果になる。たとえるなら、安静にして栄養をつける必要のある病人に、絶食して毎日朝からジョギングしろと言っているようなものだ。
著者の主張は明快で、アメリカと同様、財政出動と金融緩和、減税をやればいいだけだという。
〈まずデフレから脱却できる。さらに、円安を招くので輸出企業の競争力が増す〉
そして、景気回復で税収が伸び、名目GDPの増加で借金は目減りし、財政の健全化も可能になる。
財政支出が増えれば、借金が膨れ上がり、財政破綻するという話も嘘だと断言する。
〈日本の国債は、95%が国内の投資家によって賄われ、しかも100%円建てである。国債金利は極めて低く、安定的に消化されている。まして経常収支黒字で、世界最大の純債権国で、巨額の外貨準備を誇っている。何をどうすれば、日本国債の支払いが不能になる事態を招くことができるのか〉
はからずも今回の大震災で、日銀は金融緩和を、政府は多額の財政出動を余儀なくされた。その効果がどう出るのか見守りたい。
※SAPIO2011年5月25日号