スター知事の発言に大阪府政が揺れている。「国家・国旗を否定するなら公務員を辞めればいい」
橋下徹府知事は16日、「大阪維新の会」が提出を目指す〈君が代斉唱時に教員の起立を義務化する条例案〉に罰則を加えると発表。早速、府民からは、「英断! 起立は当然だ」「公務員は身分保障に甘えすぎ」と称賛の声が上がっている。
一方、この強硬発言に対立陣営は眉をひそめた。「完全に知事は暴走しています。国が国旗国歌法を作る時の答弁で、歌う、歌わないに自由が存在するというのは法律見解として定着している。それを弁護士出身の知事が理解していないはずがない。なのに法律以上のことに地方条例で踏み込むのは別の狙いがあるからですよ」(共産党府議)
“別の狙い”とは府知事、大阪市長のダブル選挙になる大阪「秋の陣」のことである。府庁担当記者が解説してくれた。
「教育委員会は人事、予算面などで府や市町村の役割が複雑に入り組む。そこに君が代条例を端緒に、『教員に対する責任者がはっきりしない』と問題提起することで、行政の役割分担をはっきりさせるつもりなのでしょう。
つまり、この条例案は大阪市と府を一元化する大阪都構想への布石なんです。知事は単なる君が代での起立云々に留まらず、大阪府全体のルールを定める論議に繋げようとしている」
橋下知事が代表を務める大阪維新の会は府議会で過半数を占めており、同条例が可決される公算が大きい。
すると橋下知事率いる「大阪維新の会」対「既成政党・労組・官僚組織」という構図がより鮮明になる。
「敵味方の白黒を炙りだす戦術は小泉元首相の郵政選挙を彷彿とさせる。今回、知事は、“君が代不起立ならばクビ”というフレーズで民意を見方にする算段。非常に強権的です。かつて大阪府政には関西財界が幅を利かせていました。でも本社の東京移転に伴い力を失っていった。今や知事に意見をいえる人間はいません」(同前)
英断か、暴走か――いまだ橋下府政の行き着く先は不透明だが、振り回されるのは約900万人の府民ということを忘れてはならない。
※週刊ポスト2011年6月3日号