いまだ先の見えない福島第一原発事故だが、東芝で原子炉設計や安全解析に携わった日本システム安全研究所代表の吉岡律夫氏は、福島第一原発の現状の危機をこう述べる。
「以前、『週刊ポスト』で指摘した問題が起きています。1号機の水棺作業によって想定外の水の重さがかかり、格納容器の配管部などが破損した可能性があります。圧力データから見て、それほど大きな穴が開いたとは思えませんが、放射能を帯びた水が漏れ続けています」
また吉岡氏は、1号機の圧力容器にも穴が開いているとみられる点について、
「1号機の熱出力が1380kW、炉心停止後60日目の崩壊熱がその0.095%なので、現在の炉心の発熱量では1日50トンの水が蒸発する計算になるが、実際には1日に190トンも注水している。
つまり毎日140トン程度が漏れている。この量から推測すると、制御棒の間に設置された『中性子計測管』が3~4本程度、熱で破損し、穴が開いたとみられます」
と、極めて具体的に予測した。多くの報道がいう「制御棒周辺の溶接部が溶けた」とは異なる見解だ。
※週刊ポスト2011年6月3日号