東電の経営陣にとっては「50%も」だったのだろうが、世間は「50%だけ」と受け取った。
福島第一原発事故への対応として東電が発表した「役員報酬50%削減」をめぐって批判が巻き起こった。その他にも「一般社員の年収2割削減」や新卒採用見送りなど年額540億円を捻出するリストラ策をまとめていたが、一部閣僚から「手ぬるい」との声があがり、勝俣恒久会長、清水正孝社長ら8人が役員報酬を全額返上する追加削減案を提示。
なお、東電の役員報酬は2009年度で平均3700万円であり、社長は約7200万円をもらっていると海江田万里・経産相がテレビ番組で明かした。
では、東電社長の報酬はいくらが適正なのか――東電に限らず、経営者の報酬についての議論は洋の東西を問わず尽きない。実際に日本企業の社長がどれだけの報酬を得ているのかを示す広範で具体的な統計は少ないのが実情だ。
5月13日に発表された最新の調査結果は、日本の「社長の給料」を知るうえで大きな手がかりとなる。賃金管理研究所による「社長・重役の報酬・賞与・年収額の実態」調査だ。この調査は2010年10月から2011年3月上旬にかけて企業幹部に直接対面方式で実施され、集計社数は250社(上場企業111社、非上場企業139社)にのぼる。
同研究所主任研究員の大槻幸雄氏が語る。
「賃金・人事コンサルティングを手がける当研究所の調査は、会員企業を中心に中小・零細企業から上場企業まで広く協力を仰いでいるのが強みです」
調査はまず役員報酬の平均値をあぶり出した。社長の月収は254.6万円であり、賞与が699.7万円、年収は3282.2万円である。上場企業に限ると月収361.5万円、賞与830.7万円、年収4707.9万円に跳ね上がる。非上場企業では月収190.7万円、賞与577.8万円、年収2431万円だ。
東電社長の年収7200万円は総平均の2倍以上、上場企業平均の1.5倍とわかる。しかし、日本の高額報酬経営者の歴々と比べるとどうだろう。2010年3月期から有価証券報告書に義務づけられた年1億円以上の役員報酬個別開示で約270人が1億円プレーヤーと判明した。
有名経営者の報酬を見てみよう。ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は3億円、ソフトバンクの孫正義社長は1億800万円の役員報酬だった。トヨタ自動車の豊田章男社長は1億円以下のため不明だが、役員平均が6962万円。資生堂は1億円未満にもかかわらず代表取締役副社長の報酬を6600万円と発表した(前田新造社長は1億2100万円)。ソニーの中鉢良治副会長は2億1300万円もらっている。
日産自動車のゴーン社長(8億9100万円)やソニーのストリンガー会長兼社長(8億1650万円)には高額報酬批判もあるが、それでも、日本企業のトップの平均報酬額は米国の8分の1、欧州の4分の1に過ぎない。
会社の規模によって社長の報酬が異なるのは当然である。ちなみに東電の資本金は6764億円、従業員は3万8227人である。東電の規模を考慮に入れると、清水社長の報酬の見方も違ってくるかもしれない。
※週刊ポスト2011年6月3日号