東日本が未曾有の大災害に見舞われ、もがき苦しんでいる今、商都・大阪を中心とした関西の役割が改めて見直されている。阪神・淡路大震災から立ち上がった経験を持つ関西に、日本復興の旗振り役としての期待がかかっているのだ。伝説的な深夜番組『11PM』(日本テレビ系)のキャスターとして、日本を元気にしてきた関西在住の作家・藤本義一氏が「今度は関西が以前助けてもらった恩返しをする番だ」と、その意気込みを語る。
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なぜ関西人はあの惨状から立ち直ることができたのか。
関西人は根っからの陽気さから阪神・淡路大震災も乗り越えられたのだと語る人もいるが、あんな災害を笑って済ませたらアホです。あるいは、関西人は大震災をバネにしたと言う人もいるが、バネにするには相当余裕を持って物事を見ていないとできない。
関西では“笑は商なり”“商は笑にして勝なり”という商いの基礎がある。さらに、やはり関西の強みは“小”、すなわち小さなものが集まって大きな力となることであり、それが大震災からの早い復興につながったと言える。
企業が様々に分かれ、合理的に連動しているのが関西の特徴だ。東大阪の町工場が広く知られているが、小さな企業が集まってロケットまで打ち上げてしまう。業種別に結束力を高めて大きな力になっているのが関西であり、この助け合う精神が震災でも威力を発揮した。「お金はコツコツ働いて稼ぐもの」「労せずして大金を得ようと思うな」と教えられ、一攫千金はありえないと教育されてきた。だからこそ、地場産業が育つ。
そのため、関西には中小企業が多い。もちろん大企業の下請けとして、なくてはならない会社も多い。大企業が経営危機に陥れば公的機関から援助の手が差し伸べられるのに対し、中小企業が傾いても見捨てられるだけである。それゆえに「頼れるのは自分のみ」という発想になる。
このような考え方が社会全般の常識となり、私生活にまで染み込んでいる。だから苦境に立たされるほど力を発揮するのではないだろうか。だとすれば、今こそ関西人は自分たちの経験を語り、苦境のやり過ごし方を伝えるべきだと思う。
※SAPIO2011年5月25日号