ライフ

金融のプロ 窓口で「75歳以上は親族同意必要」といわれ激怒

 法や規制には、「世の中にこういう秩序をもたらしたい」という理念がある。だが、目的と方策が合致していないタイプの“おバカ規制”が実はたくさんある。「おカネの規制」にはそんな問題が満載だ。元通産官僚で行政改革担当大臣補佐官も務めた原英史・政策工房社長が解説する。

 * * *
「お金を借りる」だけでなく「お金の運用」も規制だらけだ。

 ここ数年、耳にする小噺が、「『金融のプロ』として名高い経済人が、金融機関の窓口に行ったら『75歳以上のお客様は親族の同席が必要』と言われて激怒した」というもの。

 最近、金融機関の窓口では複雑なアンケート表への記入など、自分のカネの運用に手間がかかるようになった。

 背景は「金融商品取引法」(2006年に証券取引法から改正)に定められた、「顧客の知識、経験、財産の状況及び金融商品取引契約を締結する目的に照らして不適当と認められる勧誘」はいけないという規制だ。

「適合性原則」と呼ばれる規定で、政府の消費者基本計画では、「高齢者や若者など消費者の特性(知識、経験及び財産の状況等)に応じた勧誘を行わなければならないという原則」と書いてある。

 これに対応しようとして、「一定年齢以上の高齢者には親族の同席を求める/一定の金融商品は販売しない」といった社内ルールを作った金融機関が少なからず存在したのだ。

 金融庁はそうした反応が「必ずしも制度の趣旨に合いません」との文書を公表。“過剰な自主規制”の火消しに回ったが、いまも神経質になっている窓口は少なくない。

 また、金融分野には、「不招請勧誘の禁止」(金融商品取引法38条4号、商品先物取引法214条9号)と呼ばれる規定があり、店頭FXや商品先物など一部の取引について、いきなり訪問、電話して勧誘することは許されない。

 金融庁は、「思いがけない損失を被ることがある」などと説明するが、「だから電話してはならない」という論理は飛躍のしすぎだろう。逆に、高配当の宣伝に釣られて自分から電話してきた消費者なら被害に遭ってよいわけでもあるまい。

 問題が投資家の被害ならば、規制すべきは電話勧誘の入り口ではなく、「取引に持ち込む段階でリスクを十分説明しないこと」のはずだ。

  ちなみに、政治家の選挙の「電話作戦」は許されている。「当選したらこんな政策を実現します」という電話を執拗に受け、つい投票して“マニフェスト詐欺”に遭った人たちはたくさんいるが……なんともチグハグな話である。

※SAPIO2011年5月25日号

関連キーワード

トピックス

全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
相撲協会の公式カレンダー
《大相撲「番付崩壊時代のカレンダー」はつらいよ》2025年は1月に引退の照ノ富士が4月まで連続登場の“困った事態”に 来年は大の里・豊昇龍の2横綱体制で安泰か 表紙や売り場の置き位置にも変化が
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト