被災地では、これから梅雨になって衛生環境のさらなる悪化が懸念される。そして、その後に夏を迎える。すでに兆候があるが、動物の死体などを根城に、ハエや蚊、ネズミが大量発生することは避けようがない。
それら病原体を媒介するものを衛生動物と呼ぶが、それにより感染爆発が心配されるのは、レプトスピラ症、ハンタウイルス症、発疹チフスなど。さらに日本でもかつて大流行が起きたコレラ、ペストなども動物感染する致死率の高い病気だ。蚊が媒介する日本脳炎も怖い。
3月下旬には福島県でツツガムシ病が報告された。高熱や発疹が特徴で、重症例では死亡する。ネズミに寄生するダニの一種であるツツガムシが媒介する病気であり、洪水や土砂災害の後に患者が急増することで知られる“災害病”である。
神経質になりすぎることはよくないが、このまま手をこまぬいていれば大変な事態を招く。静岡県立大学の内藤博敬・助教がいう。
「腐敗物そのものより、衛生動物をどう管理していくかがこの夏の課題です。ハエ、ゴキブリ、ネズミなどが特に問題を起こす。何の感染症が起きやすいかと聞かれれば、『すべて』ということになる」
そうでなくとも被災者は不安や不満を募らせている。感染症の大量発生が、どんなパニックを招くかわからない。特に、人から人に感染する伝染病が流行すれば、ようやく回復してきたコミュニティが再びズタズタになりかねない。
※週刊ポスト2011年6月3日号