津波によって大きな被害を受けた宮城県南三陸町。同町旭ヶ丘地区では、4月10日以来、週に1回程度、水や支援物資などの配給場所となっている地区の集会場の前で、川柳大会を行なっている。
住民だけでなく、なかには避難所を訪れたボランティアの人たちが詠んだものも。ある男性ボランティアが即興で詠み、住民に大受けしたのが、
『困ってます 救援物資で 嫁がほしい』
この句には、ルーズリーフのメモ帳に書かれた返句がつけられた。
『これだけは 無理だと思う 支援用』
こうした「震災川柳」の盛り上がりは旭ヶ丘地区にとどまらない。宮城県を中心に広く読まれている地元新聞『河北新報』には、週に1回「川柳」コーナーが掲載されている。
その選者を務める雫石隆子さんによれば、震災後、川柳の投稿が以前より増えたという。
「毎週360通、1000句ほど来ていたのですが、震災後は、避難所からも川柳が届いて、すごい数になっています。岩手や秋田など県外からも来ますが、やはり震災について詠んだものが多いですね」
雫石さん自身も被災者であり、届いた川柳を選びながら、感動を受け、励まされているという。
「涙を流しながら選をしています。作品も胸を打つものが多く、どれも入選させてあげたいぐらい。よく川柳を『詠む』といいますが、私は『吐く』ものだと思っているんです。作品の添え書きに『川柳を作ることで一歩進めました』と書かれているなど、川柳を詠むことで被災者の方たちが癒されているということを感じますね」(雫石さん)
※週刊ポスト2011年6月3日号