手術室で極度の緊張に強いられると、執刀医の人間性がモロに出てしまう。埼玉県のとある産婦人科院長は、かつて大学病院や総合病院に勤務した経験を持つ。
「ドクターというのはもともと自我や個性の強い人が多い。手術中に口論したり、人間関係に起因する火花が飛び散ることもあります」
ある大学教授は、もたつく助手にキレ、いきなりメスを投げつけた。居合わせたスタッフ一同は凍りついたが、何も知らぬ患者はすやすやと眠ったままだ。千葉の開業医も証言した。
「医学生時代、シアター型の手術室でゴッドハンドといわれる名医のオペを見学しました。ところが僕の担当教授が、その医師と犬猿の仲。窓越しに二人の視線が絡み合い、とうとうケンカに発展し、手術どころではありませんでした」
要領を得ない助手が、ドクターからキックを食らうのはごく普通の光景のようだ。あくまで両手は患部に集中しつつ、足で不手際を叱り、怒りを表現するとはプロ根性というべきか。
※週刊ポスト2011年6月3日号