あの世でもずっと続けたいと語るほど、仕事に心酔している先達がいる。新潟県の現役最高齢ライフセーバー、本間錦一氏だ。現在84歳。荒れ狂う日本海を背に海パン姿で雄々しく立つ。
「11月まで海に入っていますよ。テトラポットまで潜水で泳いでいって黒鯛や貝を獲るんです。溺れた人を助けるには、自分が呼吸を止めても引っ張ってこなきゃならない時がありますから。1分半はいけますね」
取材日、海岸までの4.5キロの道程を自転車に乗ってやってきた。日頃のトレーニングとして自転車を1日6キロ漕ぐことにしている。
「食事に気をつけてるから、風邪もひかない。20年間、病院に行っていません。昨年、身体年齢を計ってみたら、58歳。周囲がぶったまげていました(笑い)」
昭和50年、自治体の要請を受けて、瀬波温泉海水浴場の監視員となる。3年後には村上市水難救助隊隊長に就任した。以来、30年以上、死亡水難事故ゼロを続けている。
「人命救助は4分がボーダーライン。瀬波海岸ではこれまで4人、4分以内に引きあげて人工呼吸で蘇生させました。危機一髪でひきあげ、無事を信じて蘇生を試みる中で心臓が動き出す瞬間は忘れられない。人間の命はかくも尊いものかと本当に感動するんです」
※週刊ポスト2011年6月3日号