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「東電次期社長にはきちんとした報酬で頑張ってもらえ」の声

 原発事故をめぐる東電の企業統治の機能不全に対して、業績連動報酬を導入せよとの意見がある。しかし、早稲田大学教授の久保克行氏は疑問を呈する。

「東電のようなインフラ企業は業績で報酬を決めるやり方はそぐわないのではないでしょうか。電車の運転士や飛行機のパイロットと同様に、仕事を100%安全にやり遂げることが重要だからです」

「桁外れの被害や日本の信用を失墜させた影響を考えれば役員全員が無報酬でいい」という意見もある。米コンサル・タワーズワトソンによると、米国企業は不祥事の際の役員報酬について、1~5割削減を1か月から半年間、または無期限と定めているという。

 近年の東電は度重なる不祥事や事故で役員報酬カットを続けてきた背景がある。2002年8月に原子力発電所における過去の点検記録に改竄があったことを公表し、役員報酬を減額。2007年には発電設備に関するデータ改竄問題で会長と社長の報酬を3か月間にわたり30%削減するなど、役員や幹部の計21人が減給となった。また、同年の新潟県中越沖地震による柏崎刈羽原発の停止で役員賞与を停止し、役員報酬は2割削減を現在も続けている。

「それでも経営体質を改善できなかったのは報酬カットが正しく機能していない証拠。本来ならば、清水社長が交代して、次の社長にはきちんとした報酬で頑張ってもらうのが筋です。ただ、今は社長に留まることで責任を取っている格好になっているので、報酬の大幅カットもやむを得ないことかもしれません」(久保氏)

 賃金管理研究所の主任研究員・大槻幸雄氏も極端な報酬カットには否定的だ。

「現役員の報酬カットは当然の対応ですが、原発というリスクが大きい事業を扱う会社の報酬が低額では誰もリスクをとらなくなってしまい、今後優秀な経営者がつくのかどうか。あくまで職責に見合った報酬を原則とすべきです」

 社長の報酬決定は難しい時代を迎えた。それだけに企業の舵取りを担うリーダーには、批判を招かないだけの倫理観と使命感、そして何より結果が求められている。

※週刊ポスト2011年6月3日号

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