丸みを帯びた乳房や尻、みずみずしい肌、艶やかな髪といった、いわゆる外見の“女性らしさ”。そして妊娠・出産・子育てを担う“生殖の性”。実はその両方に深く関係し、女性の人生を大きく左右するもの――それが女性ホルモンだ。
女性ホルモンには卵巣から出る「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」のふたつがあり、これらが受精の準備から授乳まで、妊娠・出産のための大事な仕事をやり続ける。
それだけでなく、女性ホルモンは通常のセックスにも大きくかかわっている。ホルモン研究で知られる早稲田大学人間科学学術院教授の山内兄人さんはこう解説する。
「エストロゲンは動物に投与すると発情することから、“発情ホルモン”ともいわれ、動物の性行動とどうかかわっているかの研究が長くされてきました。1920~30年代には、妊婦の尿から分離された物質がエストロゲンの働きを持つか、動物に与えて発情するかどうか調べる実験も多数行われていたんです。
確かに、雌ネズミを調べると、排卵前日に卵巣から分泌される多量のエストロゲンが、排卵前後の半日間のみ発情状態にさせることがわかりました。人間の場合はそれほど単純ではありませんが、同様に排卵前日にエストロゲンの分泌が高まり、それに伴って女性の性衝動が高まるという報告があります。また、エストロゲンは脳に作用して、異性への意識を強める働きもしています」
そしてエストロゲンがなければセックスそのものも困難になるという。東京ウィメンズクリニックの新野博子院長はこういう。
「エストロゲンによって膣の弾力が保たれ、男性器を包み込むことができるんです。膣壁も外陰部もやわらかくなります。潤滑液が充分に出るのも、この女性ホルモンによるもので、またみずみずしい肌も保たれるんです」
さまざまな方向から女性の一生において大きな役割を果たす女性ホルモンだが、思春期から閉経を迎えるまでのおよそ30年以上にわたって、分泌される量は、たったティースプーン1杯分! このほんのわずかな女性ホルモンによって、女性は一生、右往左往させられるのだから驚きだ。
※女性セブン2011年6月9日号