国内

歌舞伎町便り【1】震災後日本人客増「この街はまだ死んでいない」

歌舞伎町の李小牧さん

東京都新宿区歌舞伎町は東洋一の歓楽街と謳われたた不夜城だ。震災後シンボルの「歌舞伎町一番街」のネオンが消え、さすがに沈黙したかと思われた。だが5月1日にネオンが再点灯するのにあわせるように、ひと足も戻ってきたという。歌舞伎町の住人たちはこの震災をどう見ているのか。名物男たちに話を聞き、深夜の街を歩いた。

第一回目は作家・ジャーナリストで歌舞伎町で中国料理店「湖南菜館」を経営する李小牧さん。(取材・文/神田憲行)

* * *

ついこの間、本の宣伝のために地震後初めて中国に帰ってテレビや雑誌などメディアの取材を受け来たんだけど、やっぱり「日本はもうダメでしょう」と喜んでいる人がいました。毒餃子の問題があったから、農作物の放射能汚染で「今度は日本の番だ!」みたいな喜び方をする人もいる。私は「日本は第二の故郷です」といちいち反論していたんですが、残念ですね。

彼らがそう思うのは反日という部分と、日本と日本人のこと知らないからだと思います。私自身、今度の震災で日本人の良さを再認識しました。

地震当日の夜、帰宅難民の人たちのために店を開けて「半額セールスです。お店の電話も無料で使ってください」と通りに出て呼び込みしたら、たくさん人が来たよ。名前いえないけど芸能人のカップルもいた(笑)。

みんな店で雑魚寝して翌朝帰って行ったんですが、誰もパニックになってないんだよね。被災地の福島まで餃子作るボランティアにいったときも、避難民の人たちが冷静でびっくりした。強盗とかレイプのような凶悪犯罪が起きていない。これが中国だったら大変なことになってるよ(笑)。

計画停電地域のお店でも、ローソクで営業していた。飲食業で停電とかいったら大変なことだよ。でも誰も文句言わず「協力しましょう」と冷静に仕事をする。日本人の協力する心、冷静な態度に感心しました。

地震で在日中国人は23万人も帰りました。成田空港は飛行機のキャンセル待ちを待つ中国人で溢れかえり、まるで中国の鉄道の駅みたいになってたよ(笑)。私? 私は帰らないよ。私は在日中国人の「基準」みたいな人だから、私が帰ったらいま残ってる中国人がみんな帰っちゃうよ(笑)。

私は23年前に中国から歌舞伎町に来て、仕事も恋愛もこの街でお世話になった。いま帰ったら日本人に申し訳ない。帰国した人を責めるつもりはない。それぞれ事情があるだろうから。でも私自身は、こんな大変なときこそ残らないといけないと考えている。

もちろん震災後一週間ぐらいは一日の売り上げが数千円とか厳しい状況でした。歌舞伎町全体で今も外国人のお客さんは減っていますが、逆に日本人が増えた感じがするんです。それに私の知る限り、地震のせいで歌舞伎町の店は一軒もやめてないですよ。みんな必死で営業している。大丈夫、この街はまだ死んでいないです。

関連キーワード

トピックス

田村瑠奈被告(右)と父の修被告
「ハイターで指紋は消せる?」田村瑠奈被告(30)の父が公判で語った「漂白剤の使い道」【ススキノ首切断事件裁判】
週刊ポスト
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
暴力団幹部たちが熱心に取り組む若見えの工夫 ネイルサロンに通い、にんにく注射も 「プラセンタ注射はみんな打ってる」
NEWSポストセブン
10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
宇宙飛行士で京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定教授の土井隆雄氏
《アポロ11号月面着陸から55年》宇宙飛行士・土井隆雄さんが語る、人類が再び月を目指す意義 「地球の外に活動領域を広げていくことは、人類の進歩にとって必然」
週刊ポスト
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン