つるつるした食感とすっきりとしたのどごし。見た目は完全に麺だが、実は天然わかめ100%。青森県の西海岸・深浦町が生んだ『つるつるわかめ』が静かなブームを呼んでいる。地道な“町興し”の試みは開発から15年で満開の花を咲かせた。
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一見、緑色のソーメンにもシラタキにも見える。だがまぎれもなく天然わかめ100%。地元青森県以外では知る人ぞ知る存在だった『つるつるわかめ』が一躍脚光を浴びるきっかけになったのはテレビだった。
旅番組の取材で深浦町を訪れた俳優・梅沢富美男がその味を絶賛。以来、自身が出演したふたつの番組でも紹介するほど惚れ込んだ。食品や食材がテレビで紹介されることはメーカーにとっては諸刃の剣でもある。紹介された直後は一気に売れる。だが、その売り上げが続くことは稀だ。だが、『つるつるわかめ』は違った。語るのはふかうら開発の小野欣一部長だ。
「おかげ様で、その後にリピーターになってくださるお客様も多く、一過性のブームで終わりませんでした」
評判は当初から上々で、1996年には優良ふるさと食品中央コンクールで農林水産大臣賞を受賞する。その勢いで東京営業所を開設したが、問題が持ちあがる。
「130グラム200円で販売していましたが、大手のスーパーなどは、それでは高いというのです。中国から安価なわかめを輸入して加工すれば、という要請もありました」
小野氏らの決断は潔かった。あくまで地元の天然わかめ100%にこだわり、東京営業所を閉鎖したのだ。
「100%地元のもの。地域とともに歩まなければ意味はない。心をひとつにして地域に愛される会社に徹することにしました」
以後、県外では主にインターネットによる通販に力をいれている。
「青森県産のキャッチフレーズは“青森の正直”“決め手は青森県産”です。地域に根ざした商品だからこそ、皆さんに喜んで頂けると思っています」
その決断は、結果的に功を奏した。月50万円の売り上げからスタートした『つるつるわかめ』は、2000万円、3600万円、5000万円と年々売り上げを伸ばした。一昨年に初めて1億円を突破。テレビで紹介された昨年は1億6000万円を達成した。
※週刊ポスト2011年6月3日号