原発に代わるエネルギーをどうすべきか、ジャーナリストの池上彰氏は「日本ならでは」のエネルギーに注目すべきと指摘する。
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私が注目したいのは、「日本ならでは」の新エネルギーです。
たとえば今、最も有望な代替エネルギーの一つは地熱発電です。日本は火山国であり、地下には1000度ものマグマだまりで熱せられた高温の地下水が豊富に広がっています。簡単に言うと、温泉の元ですね。
日本の地熱資源量は、2300万kW以上。アメリカ、インドネシアに次いで世界第3位を誇り、ざっと原発20基分に相当するとも言われます。地下に眠るこの“宝”を有効活用しない手はありません。
地熱発電は高温の地下水から熱水や蒸気を取り出し、タービンを回して発電します。地下水はその後、再び地下に戻すため枯渇せず、天候や気象条件に左右されないので安定した出力が見込まれる上、CO2の排出が少ない。利点だらけなのです。
しかし、国内の地熱発電所は17か所にとどまり、総電力に占める地熱発電量はわずか0.3%(2007年度)。
しかも、ここ10年ほどは新設されていません。なぜでしょうか?
ネックは、初期コストの高さと立地です。大規模な掘削に費用がかさむ一方、源泉が枯れることを心配する温泉街の抵抗も根強いのです。
火山地帯は国立公園になっていることが多く、法律的に開発が制限されることもあり、現状では“宝の持ち腐れ”となっています。地元の不安を軽減しつつ、地熱発電所との共存共栄を図るそんな現実的な仕組みが求められます。
地熱発電と同じように、日本の特性を生かした中小水力発電にも期待がかかります。
話題の八ッ場(やんば)ダム(群馬県)のような大規模なダム施設の建設は難しいですが、中小規模の水力発電所はまだまだ作れます。
また、夜間などの余剰電力を利用してポンプで水を汲み上げ、昼間に水を流下させて発電する揚水発電も、山がちで急流の多い日本ならではの発電手段と言えます。
実は、広い土地が必要で大規模な発電が難しい太陽光発電も“小口”の利用なら話は別です。一戸建て住宅の屋根に太陽光パネルを張りつけて“自給自足”で発電すれば、消費電力の約8割を賄えるという試算があります。
太陽光発電は、初期コストの高さやエネルギー効率の悪さ、経年劣化などの問題点が指摘されていますが、段階的なエネルギー政策の一環として政府が後押しすれば、多くの人が協力するでしょう。「エコ意識が高く勤勉な国民が多い」という日本の特性を活用するわけです。
※SAPIO2011年6月15日号