「原発の代替エネルギーとして最も有力」と海江田万里経産相は言い、菅直人首相は「俺の大好きな」と言ってはばからない風力発電。しかし、本当に風力発電は、電力なき国の神風になり得るのか。実は知れば知るほどその風向きは怪しいのである。フリーライターの清水典之氏が報告する。
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4月22日付朝日新聞に、“夢のような記事”が載った。
「風力なら原発40基分の発電可能 環境省試算」
記事には、環境省の試算で、再生可能エネルギーのなかで風力発電を普及できる余地がもっとも大きく、最大で原発40基分が見込める結果が出たと書かれている。
この記事に代表されるように、福島原発の事故で反原発の風潮が広まり、にわかに風力発電に期待が集まっている。橋下徹大阪府知事は会見で、関西電力の原発をストップし、風力・太陽光発電を推進する計画を表明した。社民党は菅首相宛に「脱原子力と自然エネルギーへの政策転換を求める申し入れ」を提出。自民党の河野太郎議員も活発に脱原発と再生可能エネルギーへの転換を訴えている。
しかし、朝日の記事には首をかしげざるをえない。4月21日に環境省が発表した「平成22年度再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査の結果について」というリリースを確認したところ、やはりどこにも「風力で原発40基分」とは書かれていない。
この記事を厳しく批判するのが、環境問題が専門の安井至東大名誉教授だ。
「原発40基分など常識的に考えてあり得ない。環境省はポテンシャル(潜在的なエネルギーの総量)の数値を発表しただけで、現実に発電可能な数字ではない。混同してはいけません」
安井名誉教授の試算によれば、原発1基(100万kW)を代替するには2000kWクラスの風車(稼働率24%)が1770基必要だという。原発40基分なら7万基だ。現在、日本には1600基の風車があるが、その43倍に相当する。
「私は環境省の『地球温暖化対策に係る中長期ロードマップ検討会』の委員を務めていますが、委員の中で風力が最有力だという人は1人もいない。風力や太陽光のような“揺らぐ電力”は主力とはなりえない」(安井名誉教授)
風力は風任せ、太陽光は天気任せで、発電の予測がつかない。しかも風力は、電圧や周波数の制御が難しく、電力品質の面でも“揺らぎ”が大きい。
※SAPIO2011年6月15日号