「高視聴率確実の『JIN』に直球勝負するのではなく、あえて変化球を投じたのが見事に成功した。フジテレビとしてはニンマリでしょうね」
ドラマ関係者からそんな声を集めているのが、天才子役・芦田愛菜ちゃん(6)が主演するドラマ『マルモのおきて』(フジテレビ系、毎週日曜午後9時~)だ。視聴率をグングン伸ばし、5月29日の放送(6話)では15.6%を記録。同枠のドラマ『JIN-仁-』(TBS系)の同日の視聴率は18.8%で、人気ナンバー1ドラマに肉薄しているのだ。
同ドラマは、阿部サダヲ演じる独身アラフォー男が、急死した親友が残した幼い双子の姉(芦田)と弟(鈴木福くん)を引き取り、人間の言葉をしゃべる犬とともに、“家族”として、さまざまな困難を乗り越えていくヒューマン作品。笑いあり、涙ありで、見終わると、ほっと心が温まるストーリーが特徴だ。
初回の視聴率は11.6%で『JIN』の23.7%とは大きな差があったが、2話以降は12%台をキープ、5月22日、29日の放送ともに15.6%を記録し、『JIN』に迫っている(22日放送の『JIN』は18.8%)。不振が続く4月スタートの民放連ドラの中にあって、初回よりも最新話が視聴率を伸ばしているのは『名前をなくした女神』(フジテレビ系)、『生まれる。』(TBS系)とこのドラマだけ(5月30日現在)。
ドラマウオッチャーの北川昌弘さんが人気の理由を解説する。
「やはり芦田愛菜ちゃんの演技力がピカイチ。ちょっとした仕草や表情で“子供なりに周囲や大人のことを考えている”ということを感じさせる雰囲気を出すのが抜群にうまい。愛菜ちゃん以外にも、阿部サダヲさんなどネームバリューに頼らない演技派の役者陣のキャスティングも成功したといえます」
テレビ業界では、子供、動物が登場するドラマはヒットするといわれるが、人気の理由はそれだけではないという。
「他人の子供を引き取り家族として育てるというのは、いわば“究極の愛”。こうしたテーマが、震災や原発事故に対する不安感から癒やしや愛情、絆を求めるいまの日本人の思いにマッチしたのも高視聴率のひとつの要因でしょう。ヘビーになりがちな設定をほのぼのと描いたストーリー展開も視聴者に安心感を与えたと思います」(北川さん)
また、エンディングで紹介されている愛菜ちゃんと福くんによるキュートなダンスも話題。ふたりが歌う『マル・マル・モリ・モリ!』は、レコチョクデイリーランキングの3部門で1位を記録。全国の小学校や幼稚園ではふたりのダンスをまねする子供が増加中だ。