この秋から米MIT(マサチューセッツ工科大学)メディアラボの第4代所長に就任するのが伊藤穰一氏(44)だ。日本人の常識とはかけ離れた感性でITの世界を疾走する伊藤氏が語る。
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今の日本には中途半端な「甘さ」を感じます。日本が国際競争力を再び高めるには景気という追い風だけではなく、一人一人が変わる必要がありますね。
まず第一に、日本人には世界の檜舞台に立って競争する「自信」がない。これは「言語の壁」だけに起因する話ではありません。
かつて日本のビジネス界には、大企業ほど東京に優秀な人材を残し、海外には出世から外れた人材ばかりが派遣されるといった構造的なイメージがあったと思います。気付いたら国内中心のネットワークができ、その中でしかビジネスができない状況になってしまった。そして、問題のガラパゴス化に進んでいきました。
NHKのハイビジョン放送や携帯電話が世界に普及しなかったのも、開発段階で海外企業と話し合いながらモノ作りを進められなかったからでしょう。海外企業は自社が参加していないような、標準化を無視した規格は使いたくないから、商品が売れるわけがない。
※週刊ポスト2011年6月10日号