夏季休暇の長期化は、震災で打撃を受けた観光業の復活に大きく寄与すると期待されている。日本生産性本部の2009年の試算によれば、現在50%に満たない休暇取得率が100%になった場合、レジャー産業が活性化され、経済波及効果は15兆6300億円にのぼるという。さらに187.5万人の雇用が生まれ、完全失業率の約半分が解消される。この夏、休暇取得率が上がれば、かなりの経済波及効果が期待できる。
休日振り替えも効果大だ。政府で検討されている休日分散化がこの夏に限って部分的に実現することになる。観光地や道路の混雑が分散・緩和されるため、渋滞を気にせずクルマで遠出し、宿泊先の予約も取りやすくなるだろう。
すでに関東地方周辺の避暑地にある貸別荘は予約が殺到している。軽井沢プリンスホテルは今年からコテージのロングステイプランを始めたが、4月16日~7月15日の予約が600室、7月1日~9月30日の予約が450室入っている。伊豆半島でコンドミニアム約60施設を運営するステージヴィラは、7~8月の予約がすでに6~8割埋まっているという。
ツーリズム・マーケティング研究所が5月上旬に500人を対象に実施した調査では、夏の旅行について「罪悪感がある」「世間体が気になる」と震災にかかわる心理的な要因を挙げた人は2%未満だった。GWの人出の落ち込みが予想を下回ったように、自粛ムードはすでに払拭されたといっていい。同研究所の河野まゆ子研究員が話す。
「5年ほど前、景気の影響で“言い訳消費”という言葉が流行りました。不景気だから買い控えたいけれど、長期的に見れば節約に貢献する商品など、自分を納得させる理由に背中を押される消費行動のことです。今夏は節電や被災地支援などの理由に後押しされた“言い訳旅行”が増えるのではないでしょうか」
※週刊ポスト2011年6月10日号