本邦初のメルトダウン(炉心溶融)に際し、要を得ない原子力安全・保安院の説明に苛立った人も多いだろう。大前研一氏は第2次世界大戦の日本軍と同じだと痛烈に批判する。
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原子力安全・保安院は、核燃料の溶融を炉心の壊れ具合によって「炉心損傷」「燃料ペレットの溶融」「メルトダウン(炉心溶融)」の3段階と定義し、福島第一原発の場合は2番目の「燃料ペレットの溶融」であって「メルトダウン」ではない、と発表した。これには呆れて開いた口がふさがらなかった。
燃料が溶融することをメルトダウンと言うのである。燃料ペレットの一部が溶融しようが、溶けた燃料が下に落ちていこうが、メルトダウンが起きたことに変わりはない。
原子力安全・保安院は一度「メルトダウンしていない」と言ってしまったものだから、それを正当化するためにメルトダウンの定義を変えたのだ。その後、燃料は震災後まもなく、保安院の定義通りにメルトダウンしていたことが明らかになったわけだが、これではかつての日本軍が「退却」を「転進」と言い換えたのと同じではないか。
私はすでに3月19日にYouTubeで公開した講演映像の中で、メルトダウンによって圧力容器の底に溶けた燃料が落ち、その一部が格納容器の下を貫通して穴を開けた可能性が高い、と述べている。そこから高濃度の放射能を帯びた汚染水がタービン建屋に漏れている可能性を指摘し、その始末のほうが今後の大きな問題となるだろうと警告している。東電と保安院がそれを認めたのは、1号機に人が入った後の5月12日である。
※SAPIO2011年6月15日号