タレントの食事マナーが注視されている。発端は、女優・北川景子(24)が『SMAP×SMAP』(フジ・5月16日放送)に出演した際、餃子を口の中でもぐもぐと頬張ったシーン。「リスの頬袋」「がっつきすぎ」との声がネット上で交わされた。折しも同時期の新聞には、NHKの朝ドラ「おひさま」に出演する井上真央(24)の食事シーンを〈お箸の持ち方が美しく、感心しました〉と称賛する投稿が寄せられていた。
ただし、有名人の箸使いや食事マナーの劣化が指摘されるのは今回が初めてではない。グルメ番組に勢いのあった2000年代初頭にも、週刊誌などを中心に批判記事が展開されていた。一部を抜粋すると、
〈落語家Hは三本指で二本の箸を持つから、小さい物が挟めない。顔を料理に迎えにいく犬食いになる〉〈歌手のSは手皿を最高のマナーと勘違いしている〉
ちなみに、茶道では和菓子を懐紙に載せながら左手に取る所作があるが、これは懐紙を皿として用い、手を使うのは御法度である。
テレビは影響力が強いため、間違った食事マナーが子供らに伝播する懸念もある。目白大学人間学部子ども学科の谷田貝公昭教授は、ため息をつきながらいう。
「食事マナーの中でも箸の持ち方は基本中の基本です。(子供への)余波を考えると直るまで出演させない方が賢明です。NHKで児童番組を作っていらした劇作家の飯沢匡さん(1994年没)は、『僕の関係するところできちんと箸が使えない役者がいたら、明日までに直してこい、直らなければ降ろすという』と話しておられました。
昔の女優さんたち――例えば朝丘雪路さんは、それはもう上品な箸使いで食べておられましたよ。今は制作側が、そこまで気が回っていないんじゃないでしょうか。まあ、社会全体の責任でもありますが」
谷田貝教授によると昭和10年頃には、3歳半の幼児7割が成人同様に箸を使えたという報告があるという。
※週刊ポスト2011年6月10日号