5月21日、動画投稿サイト『YouTube』に「東京電力福島原発事故後に生まれた耳なし子うさぎ」と題された動画がアップされた。飼い主は福島第一原発の30km圏から数百m外側の福島・浪江町在住の人物だという。
原発事故によって計画的避難区域に指定された地域で発見されたという「耳なしうさぎ」の映像はアップされるや、世界中から大反響を呼んだ。再生回数はすでに100万回を超え、米国のニュースサイトでも「日本の放射能漏れで耳なしうさぎが生まれた?」と紹介され、世界が騒然となった。
このうさぎの飼い主で投稿者でもあるAさん(56才・女性)に話を聞いた。Aさんは、現在も浪江町の津島地区に住んでおり、牧場を経営している。うさぎは、知人から譲り受けたりして、ペットとして約20年前から飼い始めた。現在、25羽を飼っているという。
「耳のないうさぎが正確にいつ誕生したかはわかりませんが、おそらく4月の終わりです」
うさぎの妊娠期間はおよそ1か月ほどだから、3月11日の震災後に妊娠して生まれたということになる。
「いままで耳のないうさぎなんて見たことはなかったので、珍しいと、知人とふたりで投稿したんです」(Aさん)
震災後に生まれたうさぎで、耳のないうさぎはこの1羽のみ。
「本来なら耳がある部分を触ってみると、小さな突起がありました。声をかけても反応が鈍いので、聴力にも少し問題があるようです」(Aさん)
今後、研究機関に検査してもらうつもりだという。Aさんの自宅が福島第一原発から30kmしか離れていないということもあって、耳のないうさぎが生まれたという事実は戦慄をもって受け止められているが、専門家はどう見ているのだろうか。放射線生物学が専門で環境放射能に詳しい北里大学獣医学部の伊藤伸彦教授はこう話す。
「耳のないうさぎのような奇形が生まれるのは珍しいことではありません。ウイルスの可能性もあるし、親うさぎの歯で耳が切れてしまった可能性もあります」
生まれて間もない赤ちゃんのときに、母親うさぎの歯が耳に当たって切れてしまうことがあり、その場合は毛をかき分けてみれば傷でわかるという。ただし、放射線によって奇形が生まれてくる可能性も「非常に低いですが、ゼロではない」と伊藤教授はいう。
「妊娠すると、細胞分裂をしながら順番に臓器ができていきます。たまたま臓器ができるときに放射線を強く浴びると、細胞が死んでしまい、その部分の臓器ができない可能性があるんです」(伊藤教授)
※女性セブン2011年6月16日号