国内

鎌倉の大仏も大地震の被災者 鎌倉時代に大津波で流失の過去

 今回の東日本大震災では多くの人命が失われた。かつて、われわれ日本人は、このような大震災に遭遇しながら、いかに苛酷な運命に立ち向かって行ったか。作家・井沢元彦氏が論ずる。

 * * *
 われわれの住んでいる日本は、古くから地震や、それに伴う津波が当たり前だったことは、あらためて述べる必要はないかもしれない。

 古くは平安時代の八六九年、三陸沖の海底を震源とした大地震と大津波が起こったことがある。当時の年号を取って貞観地震と呼ぶ。

 家屋は倒壊し地割れが起こり大津波が内陸の奥までやってきた。当時の人口規模で千人が溺死した。これは今なら数万人の単位だろう。また、この貞観年間には富士山大噴火(864~866年)も起こっている。これは記録に残る最大の噴火と言われている。

 ちょうど都(平安京)では藤原氏の他氏排斥がたけなわで、応天門の変(866年)によって古代豪族大伴氏が没落した頃だ。

 日本はまさに地震列島なので、地震や噴火や津波の類いをいちいち紹介していたらそれだけで紙数が埋まってしまうが、歴史上の「有名人」が被災者である大津波と大地震をそれぞれ一つずつ紹介しておこう。

 鎌倉の大仏はよく御存じだろう。正式には高徳院の阿弥陀如来像だが、この大仏様も実は大津波の「被災者」だ。

 昔の小学唱歌にもあった通り、この大仏は「露座」すなわち大仏殿がなく剥きだしである。それは大仏殿が鎌倉時代の明応年間(1495年あるいは1498年といわれる)に起こった大地震(明応地震)に伴う大津波で流失してしまったからなのだ。

 一方、方広寺の大仏というのは御存じないかもしれない。これは権力の絶頂にあった豊臣秀吉が、奈良の大仏(東大寺)より巨大なものを造ってやろうと京の東山に建立したものだ。銅ではなく木製だったが完成直前に大地震(慶長伏見地震)が起こり倒壊してしまった。この時、秀吉も自分の住んでいた伏見城が倒壊し避難している。

 実はこの年(1596年)は、九月一日に伊予国(愛媛県)を中心とした大地震が起こり、そのわずか三日後に今度は豊後国(大分県)で大地震が起こり、その翌日に京阪神地方が大地震に見舞われるという、「トリプルパンチ」の年であった。

 中小規模のものを含めれば、日本という国は連続地震が決して少なくない国である。

※週刊ポスト2011年6月10日号

関連記事

トピックス

俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
【本人が語った「大事な存在」】水上恒司(26)、初ロマンスは“マギー似”の年上女性 直撃に「別に隠すようなことではないと思うので」と堂々宣言
NEWSポストセブン
佳子さまの「多幸感メイク」驚きの声(2025年11月9日、写真/JMPA)
《最旬の「多幸感メイク」に驚きの声》佳子さま、“ふわふわ清楚ワンピース”の装いでメイクの印象を一変させていた 美容関係者は「この“すっぴん風”はまさに今季のトレンド」と称賛
NEWSポストセブン
俳優の水上恒司が真剣交際していることがわかった
水上恒司(26)『中学聖日記』から7年…マギー似美女と“庶民派スーパーデート” 取材に「はい、お付き合いしてます」とコメント
NEWSポストセブン
ラオスに滞在中の天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《ラオスの民族衣装も》愛子さま、動きやすいパンツスタイルでご視察 現地に寄り添うお気持ちあふれるコーデ
NEWSポストセブン
AIの技術で遭遇リスクを可視化する「クマ遭遇AI予測マップ」
AIを活用し遭遇リスクを可視化した「クマ遭遇AI予測マップ」から見えてくるもの 遭遇確率が高いのは「山と川に挟まれた住宅周辺」、“過疎化”も重要なキーワードに
週刊ポスト
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン