近頃では「携帯に時計ついているから」と、腕時計をしない人が増えている。かつては駅前などで、腕時計をこっそり外して女の子に「すいません。今、何時ですか?」と声をかけ、ナンパのキッカケにしていた男性を見かけたものだが、それも今は昔。
男性を中心に、コレクションやこだわりの対象となる腕時計。ちょっとしたワンルームマンションが買えるような価格の商品もある、パテック・フィリップなど“庶民にはムリムリ”なアイテムも存在する。
携帯電話でも時間は確認できるかもしれないが、腕時計の良さは「機能性」だけではなく、毎日身につけるもののひとつとして、その人の個性や趣味を表現していたり、男女問わず「装飾品」の類としてファッションの一部を形成しているということ。
また「時を刻むもの」としての意味から、女性が婚約指輪のお返しや結納返しに、腕時計をプレゼントするケースは多い。日常的に身につけるアイテムの中でも、“特別な意味” を持つ要素が強いもののひとつといってよいだろう。
不動産や自動車が買えるような高級腕時計をする必要はないが、「時を刻むもの」にこだわると、錯覚ではあるのだが“自分の時間にこだわる”という気持ちがすることも。
値段に左右される必要はなく手ごろな価格でも、自分の個性に合ったものや「装飾品」としての腕時計を探す際に、“これからの自分の「時を刻むもの」だ”という心もちで選ぼうとすると、きっと“特別な買い物”という気分になるだろう。
コレクターや特別「時計が好き」といった人でなくても、「バーゼル・ワールド」「バーゼル・フェア」というイベント名を聞いたことがあるだろうか?
毎年3月・4月頃にスイスのバーゼルで行なわれる、世界最大の宝飾品と時計の見本市で、かつては商取引関係者のみのイベントだったが、現在は一般人も見学できる――いわば世界中が注目する“時計にとっての晴れ舞台”。
もちろんコレクター垂涎のアイテムや最新の製品がたっぷり展示されるのだが、2011年のバーゼル・ワールドに出品した国内メーカー製品の中で、手ごろな価格ながらデザインなどで評判が良かったものとして、セイコーインスツルの2アイテムが挙げられる。
ひとつは7月発売予定のISSEY MIYAKEウォッチ10周年記念スペシャルモデルの「O(オー)」(1万6800円)。デザイナー吉岡徳仁氏が「水のブレスレット」をイメージし、フランス語で水を表す「eau(オー)」から命名。医療用カテーテルなどに使用される素材グリルアミドを採用して、25gという軽さと超弾性のフィット感を実現。
会場ではデザインの斬新さへの評価はもちろん、ファッション性の高さからヨーロッパを中心とした女性層から支持を集めた。
もうひとつはアレッシィウォッチコレクションから、プロダクトデザイナーのカリム・ラシッド氏がデザインした「AL2500」シリーズ。ポップなデザインやモダンアート好きが好みそうなつくりとなっている。
「アメリカで最も成功しているプロダクトデザイナーのひとり」といわれるほど、欧米で人気の高いラシッド氏の個性的なデザインが支持されたほか、9450円というリーズナブルさも高く評価された。
こだわるからには“ちょっと蘊蓄も……”といった人には、「バーゼル・ワールドでさ……」という前フリから語れるアイテムだ。
これからの季節は半袖など、腕の露出が高まる時期でもある。携帯電話の普及でナンパのキッカケは1つ減ったかもしれないが、個性的なデザインの腕時計で“一緒に時を刻む”ことになるかもしれない人――とまではいかなくても、誰かと楽しい会話ができるキッカケは作れるかもしれない。