5月23日に文科省前で行われた子供の被曝問題を訴える大規模デモ。その輪の中心にいたのが、「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク」世話人の佐藤幸子さん(53)だ。
20ミリシーベルト問題。これは4月19日に文部科学省が出した通知に端を発する。学校が校庭などで児童を活動させる際の判断基準となる放射線量の暫定的な目安を「年間20ミリシーベルト=1時間あたり3.8マイクロシーベルト」と決めたのだ。福島の学校の多くは、それまで校庭の使用を控えていた。ところが20ミリシーベルトという基準値が設定されたことで、基準値以下であれば屋外活動をしても問題ないと判断し、部活動が再開されたり、運動会が実施されたりした。
しかし、年間20ミリシーベルトという基準値は決して安全とはいえないと、多くの専門家が指摘する。この数値は、病院に勤めるレントゲン技師など、放射線を扱う人の健康被害を防ぐために設けられた厳しい基準値をも大きく超えるという。
さらに一般的に子供は大人より細胞分裂が速いため、その分、放射能によって傷ついた細胞が増えやすい。その影響は大人の3倍以上ともいわれ、実際に旧ソ連で起きたチェルノブイリの事故では、小児の甲状腺がんが激増した。文科省が設定した基準値には海外からも批判の声があがり、ドイツなどで抗議のデモが起こった。
国内でも佐藤さんをはじめ、多くの人たちがこの数字に疑問を持ち、撤回を求めた。しかし、菅直人総理大臣や文部科学省は、この数値を取り消すことはおろか、危険な場から子供を避難させる措置さえとっていない。校庭の表土の入れ替えについても、当初は「必要ない」といっていた。佐藤さんは憤る。
「放射能は目に見えません。木がどんどん枯れていくとか、鳥がばたばた死んでいるとか、それがわかれば誰だって危険を感じられるけれど、放射能の線量が高いというだけではわからない。だから国が動かなければならないんです」
※女性セブン2011年6月16日号