東宝・映画企画部の映画プロデューサー川村元気さん(32)は、26才で『電車男』を企画・プロデュース。その後も、『陰日向に咲く』『デトロイト・メタル・シティ』『告白』『悪人』など、数々のヒット映画を手がけてきた。それらを生むための秘訣は何だろうか。
川村さんは「秘訣や哲学はないです」といいきる。
「ぼくの映画づくりは感覚的。自分の生活実感といま日本人が抱いている“時代の気分”がどう重なるかがポイントです。不景気だからといって前向きな映画ばかりだとお客さんはドス黒いものも見たくなるはず。甘いものばかりじゃなくて辛いものも食べたいんじゃないかと思いながら映画づくりをしました。ムーブメントが始まってからそのお尻に乗ってもワクワクしないんです」
“先読み”の姿勢が昨年の2大ヒットを生む。『告白』は焼き肉を食べるためわざわざ大阪を訪れたとき、書店でたまたま原作小説を見かけたという。
「当時、初版が出たばかりで店員が怨念めいた手書きのポップを書いていたんです。それに惹かれて読んでみたら面白くて、すぐにどうやって映画にしようかと頭がいっぱいになりました」
愛娘を殺された女教師(松たか子)が犯人の中学生に復讐を果たす『告白』の映画化に対しては、「何でこんなものを」と反対の声も少なくなかった。
「この映画は『最悪のことが起きてどんどん状況が悪くなり、いちばん最悪なところで終わる』と最初に中島哲也監督と決めていました。救いは一切描かないでおこうと。そうすれば、見終わったあとに家や飲み屋で『あれは良くない』『おれだったらこうする』と議論してもらえる。そこで観客自身のなかでエンドマークがつく作品にしたいと思ったんです」
※女性セブン2011年6月16日号