原発事故によって節電が叫ばれるようになって以後、「お母さんが子供のころはね…」と、電気がいまほどなかった時代の暮らしについて、子供たちに話してあげた人も少なくないのでは。そう、あのころ、それでも私たちはその生活を、不自由とは感じていなかった。
現在、51才の主婦(神奈川県在住)が、1970年代初頭の暮らしを振り返る。
「6畳2間と3畳ほどの台所の付いた県営アパートに、両親と兄の4人で暮らしていました。もちろん、クーラーなんてありません。寝苦しい夏の夜は、窓を開けたまま扇風機を付けっぱなしにして兄と二段ベッドで寝ていました。扇風機は首振りにしてね」
千葉県在住の49才主婦の家では、サラリーマンの父親が帰ってくると、夏はランニングにステテコ姿になって、冷蔵庫から大瓶のビールを自分で取り出した。テレビのスイッチを付け、チャンネルをひねってプロ野球中継に合わせると、団扇片手においしそうにビールを飲む。食事が終わっても野球は続き、裏番組が見られないと、泣いてしまった。
「扇風機の風でお豆腐にかけた鰹節が飛んじゃったりしてね(笑い)。あのころはトイレの電球も20ワットとかで暗かったでしょ。夜、トイレに行くのが怖くてね。お部屋の電灯も、いまみたいに昼間からつけっぱなしということもなかったし。クーラーがわが家にやってきたのは、私が中学3年生で、高校受験を迎えたころでしたね。窓付け式で、いまのエアコンの3倍ぐらい大きかったんじゃないかしら」
当時はまだクーラーがそれほど普及しておらず、外気温も現在と比べると3℃以上、低かったように思う。
「そこに夕立が降ると、一気に涼しくなって。夏の夕方独特の湿ったにおいが好きでした」(同)
※女性セブン2011年6月16日号