国内

福島の学校で基準値上回る67マイクロシーベルトの放射能観測

5月23日、「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク」世話人の佐藤幸子さん(53)を中心に、子供の被爆問題を訴える大規模デモが文科省前で行われた。

佐藤さんの事業所に放射能の線量を測定する装置ガイガーカウンターが届けられたのは、3月28日のことだった。以前から原発について一緒に考えてきた知人から送られてきたもので、「これで福島から情報を発信してほしい」との依頼があった。

それでまず、福島市内の近くの駐車場で測ってみると、毎時5マイクロシーベルトという高い数値を示した。国が発表している毎時1~2マイクロシーベルトという数値の2倍以上だった。

「仲間のひとりが、降り積もった放射性物質が風とか雨水によって流れて、溜まっている場所があるんじゃないかといったんです。だとしたら、子供をそこに立ち入らせないようにしようという話になりました」(佐藤さん)

3月29日と30日の両日、佐藤さんらは周囲の小中学校へ。側溝など放射性物質が溜まっていそうな地点の地表面から5~10cmにガイガーカウンターをセット、線量をチェックして回った。

「びっくりしました。給食を運び込むところにあるU字溝では毎時67マイクロシーベルトと信じられないほど高い数字だったんです」(佐藤さん)

すぐに知人を通じて県の教育委員会へ。測った線量を表にして示したところ、総務課長と学校教育健康課の職員の顔色が変わったという。

「検討する」――福島県はそう約束し、4月5日から2日間にわたって県内1400校の線量を調べ、その数値を公表した。佐藤さんたちの活動が県を動かしたのだ。

「ただ、そのやり方が問題で、放射性物質が溜まりやすい側溝などは測っていません。グラウンドを数か所測るだけで“安全でした”というんです」

それから、佐藤さんらは保育園や幼稚園などから依頼があれば、ガイガーカウンターをもって測りに行き、施設内の放射線量マップを作成。土を取り除くなど除染作業も行った。同時に、県や国に数値の撤回や除染対策を求め、他の市民団体と何度となく文科省などへ出向いて、こう訴えた。

「何がいちばん日本にとって大事なんですか? 経済なんですか? 違いますよね、子供でしょう!」

そして5月27日、佐藤さんらの活動がようやく結実した。文科省が次のように発表したのだ。

「学校で子供たちが受ける放射線量は当面、年間1ミリシーベルト以下を目指す」
「一定の放射線量を超えた学校は、校庭の表面の土を取り除く費用のほぼ全額を国が負担する」

佐藤さんはいう。「一歩前進ですが、国は20ミリシーベルトという基準を撤回したわけではありません。また学校だけでなく、生活の場でもこの基準を見直すべきです。まだまだ解決していないところが多い。だから活動を続けます」

1ミリシーベルト以下という基準になれば、「東京など関東の一部でも引っかかる」という声もある。

※女性セブン2011年6月16日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
JR東日本はクマとの衝突で71件の輸送障害 保線作業員はクマ撃退スプレーを携行、出没状況を踏まえて忌避剤を散布 貨物列車と衝突すれば首都圏の生活に大きな影響出るか
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《全国で被害多発》クマ騒動とコロナ騒動の共通点 “新しい恐怖”にどう立ち向かえばいいのか【石原壮一郎氏が解説】
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
”クマ研究の権威”である坪田敏男教授がインタビューに答えた
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
NEWSポストセブン
“ポケットイン”で話題になった劉勁松アジア局長(時事通信フォト)
“両手ポケットイン”中国外交官が「ニコニコ笑顔」で「握手のため自ら手を差し伸べた」“意外な相手”とは【日中局長会議の動画がアジアで波紋】
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
土曜プレミアムで放送される映画『テルマエ・ロマエ』
《一連の騒動の影響は?》フジテレビ特番枠『土曜プレミアム』に異変 かつての映画枠『ゴールデン洋画劇場』に回帰か、それとも苦渋の選択か 
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン