菅直人首相にとっては、まさに首の皮一枚でつながった状態だろう。東日本大震災後初めての党首討論冒頭で自民党・谷垣禎一総裁のことを「総理」といい間違えたことを皮切りに、大紛糾。内閣不信任決議案の提出、副大臣らの辞意表明など、まさに波乱含みの様相を呈していた。
6月2日の民主党代議士会では、「震災復興に一定のめどがついた段階で退陣する」と、いつになるのかわからない期限を設けての、その場しのぎの退陣表明。その後の衆院本会議では賛成152、反対293と大差で危機を回避したものの、小沢一郎氏を始めとする党内の造反組は、賛成票を投じた松木謙公氏と横粂勝仁氏以外は欠席。暗雲晴れぬ結果も茶番だったのか。
その陰では、こんなことも。その前日に行なわれた党首討論での一コマだ。党首討論といえば、本誌2月25日号で報じた“菅ペ”(=菅総理のカンニングペーパー)騒動が思い起こされる(関連記事参照)が、ひょっとして今回も……などと淡い期待を抱いていくと、ご覧の通り、ちゃ~んと用意されていたのだ。
そこには、〈今は政治混乱を避け、与野党一致で対処すべき「国難」の時〉と書かれていたが、与野党一致どころか、与党造反組も多数出た今回の事態をどう考えているのだろうか。
ちなみに討論では、〈基本姿勢【1】〈攻め〉……震災後初めての党首討論の重み〉でまずは野党を牽制。続いて〈基本姿勢【2】〈守り〉〉。野党からの辞職を求める声を想定し、〈「震災復旧・復興」と「原発収束」最優先。今、自分の責任を途中で放棄する考えはない〉と、“菅ペ”に忠実な答弁を繰り広げていたが、どうやら攻めきれず、守りきれなかったようだ。それでも首の皮一枚はやっぱり“菅ペ”の勝利なのか。
撮影■太田真三
※週刊ポスト2011年6月17日号