総務省は東日本大震災の被災地3県(岩手・宮城・福島)の1年間延長を除き、地デジ化への完全移行を7月24日に強行する。その根拠とされてきたのが、昨年12月に実施され、今年3月に公表された「地デジ普及率95%」という怪しげな数字である。
出典は、総務省所管の社団法人デジタル放送推進協会によって行なわれた「地上デジタルテレビ放送に関する浸透度調査」。全国47都道府県を対象地域とし、対象者は男女15歳以上80歳未満の約40万人。
そのうち調査に同意した1万9000人にアンケート用紙を郵送し、回答があった1万3109人を有効サンプル数としている。
調査結果の中で、地デジ対応受信機(地デジ放送対応テレビ、チューナー、チューナー内蔵録画機・パソコンなど)の世帯普及率が95%とされているのだ。片山善博・総務相は「今回の調査を踏まえて、7月24日の移行を延期するという考えはありません」と胸を張った。
しかし、これが眉唾モノなのだ。
第一の問題点は、母集団から約260万もある80歳以上の高齢者世帯が最初から除外されていることである。
自治体から依頼され、週末ごとに高齢者に地デジ化への対応を説明している関西在住のボランティア男性がいう。
「リタイアして家で過ごす時間が長かったり、体を悪くしていたりする高齢者は生活に必要な情報をテレビに頼っているケースが多い。しかし、地デジの普及率が最も遅れているのが高齢者世帯です」
国民生活センターへの地デジに関する相談でも、高齢者の割合が高い。昨年1年間で寄せられたもののうち、年齢が判明しているものは3844件。その中で成人人口の8.1%しかいない80歳以上からの相談は511件(13%)を占めている。
※週刊ポスト2011年6月17日号