2011年4月、米コロンビア大学名誉教授を退任後、日本国籍を取得し、日本への永住を決めたドナルド・キーン氏。日本文学研究の第一人者として知られる氏が、日本を終の棲家とし、日本人になろうとした思いを語る。
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東日本大震災が起きて、日本人を励ますために国籍を取ったという報道が一部にはあったようですが、それ自体は正確でなく、誤報です。
しかし、幸いなことに悪い誤報ではなく、私はいちいち直す必要は感じません。外国人が日本から逃げているという話を知ってひどいと思いました。日本でお金を儲けたり、いろいろ関係があっても、いざとなると逃げるというのはけしからんと。
むしろ逆だと思いました。津波などの恐ろしさを知って逆に日本に行きたい、住みたいと強く思うようになったのです。
震災での日本人の対応は素晴らしいと思います。日本人には普段あまり興味のないようなアメリカ人も感激しています。他の国で大災害が起きるとアメリカ人の間ではかわいそうだという気持ちは起きます。
しかし東日本大震災では日本のために何かやりたいという気持ちが起きたのです。大学のイベントでの収入を寄付するとか、そういう活動が行なわれました。私もわずかですが寄付しました。
終戦直後、私は1週間ほど東京にいました。焼け野原でした。煙突とか倉のような建物しか残っていませんでした。しかしその時、日本人は絶望しなかったのです。もっといい東京を作ると決心した。
東京だけではないですが、それは見事に成功しました。私は日本人が新しい日本を作るよう祈っていますし、今回も日本人にはそれが出来ると思います。
※SAPIO2011年6月15日号