震災後、不安な気持ちになったり心がふさぎ込んだりしている人が多いいま、心にじんわりしみる本が求められている。年間300冊以上読むという読書好きでも知られる、女優で脚本家の中江有里さんが選りすぐりの本をお届けします。
●向井理主演で映画化のノンフィクション
『僕たちは世界を変えることができない。』(葉田甲太・小学館・1365円)
お気楽な医大生たちがふとしたことから、カンボジアに150万円で小学校を建てることを決意! 初めて踏んだカンボジアの地では、その貧しさや小学校の卒業率が50%に満たないことに驚きます。地雷やエイズで傷つくカンボジアの人々に自分の無力を感じながらも行動しようとする彼ら。他人のためにできることは少ないけどやったぶんだけ誰かの助けになる、と勇気づけられます。
●愛の営みから生まれる人間賛歌
『ラブシーンの言葉』(荒川洋治・新潮文庫・460円)
現代詩作家がさまざまな文学作品のラブシーンの場面をとりあげたエッセイ。「性の営み」とは生の営み、つまり生きること。ラブシーンを映像で見るにはちょっと抵抗がある。しかし、言葉にすれば彩り輝く。「愛のかたち」は個人的なものだからこそ、それぞれの人の中で「愛」に値する言葉が生まれるのだと思います。
●かわいい猫に癒される
『吾輩は看板猫である』(梅津有希子・文藝春秋・1000円)
お店の前でわがもの顔で陣取る看板猫がどのページにもあふれています。猫好きはもちろん、猫アレルギーがあるかたにも、そのかわいさだけを堪能できることうけあいです。基本人間につれない猫をこれだけの写真に収めた写真家の苦労も偲ばれます。そばにいるだけで心慰めてくれる動物の代わりになってくれそう。
※女性セブン2011年6月16日号