菅内閣の不信任決議騒動では、菅直人首相を追い詰めた側にも奇妙な行動が多かった。
採決直前に開かれた民主党代議士会は菅首相の辞意表明演説に続いて、鳩山由紀夫・前首相が質問に立ち、「一定の仕事を果たされたら身を捨てていただきたい」と語った。この2人が代議士会の前に「引き際」について十分に話し合っていたのは多数報じられているが、なんだか八百長くさい。
鳩山氏の役割は、「菅首相が約束を守らないのではないか」「即刻辞任すべきだ」とする造反組をなだめることにあった。昨年の代表選でも見せた、あっちにもこっちにも調子のよいことをいう尻の軽さがまた出たというところか。
が、早くも岡田克也幹事長は「(鳩菅合意は)辞任の条件ではない」、与謝野馨・経財相は「辞任という言葉は使っていない」と、これを反故にしようとしている。またしても“ポッポのスタンドプレー”が党内抗争を激化させる愚が繰り返される可能性もある。
案の定、菅首相は6月2日夜の会見で「確認書で書かれた以外の一切の約束はない」としたうえで、「福島第一原発の原子炉が冷温停止、放射性物質がほぼ無くなるまで全力を挙げる。当然の私の責任だ」と述べた。東京電力が発表した工程表では冷温停止は「9か月以内」だから、菅氏は「来年春まで辞めない」と宣言したも同然だ。だが、“炉内の温度が冷えなければ総理の椅子に座り続けられる”と考えるような人物が、原発事故処理に努力するわけがない。
※週刊ポスト2011年6月17日号