セ・リーグのここ3年間の覇者は巨人。だが、そんな巨人も弱い時代があった。巨人が、27ゲーム差の最下位に転じたのは1974年に引退した長嶋茂雄が監督就任した1975年のことだった。
巨人番記者が振り返る。
「長嶋のいなくなった穴は戦力的なものよりも、精神的なものでした。おまけに長嶋の穴を埋めるために獲得したメジャーリーガーのD・ジョンソンが8打席連続三振など大不振。付いたあだ名がジョン損でした(笑い)。王(貞治)さんは足の故障で13年続いたホームラン王を奪われるし、“史上最悪の1年”でしたね」
この屈辱を晴らすべく、オフには投打の柱となる張本勲、加藤初を補強して翌年にはV奪回を果たす。以降の巨人は、各球団のスターを軒なみ獲得する“拡大路線”に舵を切り、「V逸は3年が限界」という常勝軍団を作り上げていく。
ただし、最近の巨人について、西武、ダイエーで球団代表を務めた坂井保之氏は感じることがあるという。
「かつての巨人は王が守るファーストの控えに何人もの六大学のスターを獲得していった。王が活躍すると、控え選手には大金を払って飼い殺しにするしかない。フロントと監督がその非情さを徹底できるから巨人は強いし、数々の偉業も達成できた。しかし、最近の巨人からは強さにかけるポリシーが伝わってこない。オーナーやGMばかりか、監督の首のすげ替えまで読売の人事異動と言い切ってしまう。昔なら温情をかけずに切り捨てていましたよ」
ヤクルト、西武の元監督・広岡達朗氏も手厳しい。
「巨人はこれからが低迷期なんじゃないか。今までは爆発力で誤魔化せたけど、低反発ボールではスタンドまで届かない。そうなると采配が問われるわけだが、(今年は)原(辰徳)くんの正念場となる……」
今シーズン終了後、巨人軍フロントは原体制にどのような判断を下しているか。
※週刊ポスト2011年6月17日号