菅内閣に対する不信任決議騒動では鳩山由紀夫・前首相や、小沢一郎・元民主党代表の言動に注目が集まったが、もう一人騒動に踊らされた人物がいることを忘れてはならない。
“黄門様”こと渡部恒三・民主党最高顧問だ。
渡部氏は5月24日の79歳の誕生日に小沢氏と盛大な合同誕生会を開き、「小沢さんとはこの数年、互いに目も合わせず、口も聞かない」(本人談)という険悪な関係を修復したばかり。
「内閣不信任案に小沢君の子分らが80人賛成すると成立してしまう。小沢君に会って、つまらないことをしないよう説得しなければならない」
と語り、本会議場では決議に賛成した松木謙公氏を懸命に説得して「党内融和の立役者」を演じようとした。ところが、黄門様の本音は、不信任案否決に複雑な心境だったのだという。
というのも、小沢グループなどの大量造反で菅首相の不信任成立が濃厚な状況になると、自民党サイドから、「菅が辞めれば大連立。後継首相に最も座りがいいのは恒三さん」という情報が流されていたからだ。
“天下の副将軍”がひょんなことから将軍様になる、という都合のよいストーリーだが、渡部氏は福島への原発誘致を推進してきた政治家であり、さすがに79歳の総理が原発事故対応や震災復興を担うのはブラックジョークだろう。
だが、ご本人は満更でもなかった。
「実は、自民党内でポスト菅に恒三さんはどうかというアイデアは1か月ほど前からあった。トンちゃん(村山富市・元首相)に阪神・淡路大震災の対応ができたんだから、恒三さんでも大丈夫というヘンテコな論理だった。すると、あれだけ小沢を批判していた恒三さんが、急に合同誕生会をやるという。これは本人が本気にして欲を出したなと感じた」(自民党長老)
保身、延命、売名、そして勘違い……。この茶番劇には民主党の重鎮から若手までの計算高さばかりがにじみ出ていた。
※週刊ポスト2011年6月17日号