いま、日本には、ため息があふれている。東日本大震災、原発事故、政治の迷走。なかなか浮上できない経済。うっとうしい雰囲気がずっと続いている。だが、ベストセラー『がんばらない』著者で諏訪中央病院名誉院長の鎌田實氏は、発想の転換をすれば、必ず回復できるはずと提案する。
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昨年の秋、PIGSといわれ、世界経済発展の足を引っ張り、破綻が心配な国をいくつか回ってきた。スペイン、イタリア、ギリシャ。しかしこの国々が明るかった。
夜中までレストランは満員。飲み、歌い、踊り、おしゃべりをし、大騒ぎなのである。スペインのレストランで地元の人に「失業率が20%を超えているのにこんな生活がよくできますね」と聞くと、「これをやっているから失業率が20%で済んでいるんだ。飲まなくなって、歌わなくなって、食べなくなったら、この国はもっと悪くなる」
なるほどな、と思った。楽しいことを忌み嫌う必要なんてない。おもしろいことに貪欲でいいのだ。
被災者のことを考えて自粛したい気持ちはわかるが、日本全体が内向きになると消費が低下して経済が悪くなり、東北を応援できない悪循環に陥る。被災地を助けるためにも、バンバン働いて、ドンドン遊ぶ必要がある。萎縮なんてしていられない。明るく、明るくいこう。
※週刊ポスト2011年6月17日号