本誌はこのタイミングだからこそ大胆に提言する。
福島第一原発から半径20km圏内の土地を政府と東電の負担ですべて買い取り、住民への補償と移転を両者の責任で進めたうえで、広大な無人地帯となった避難区域に世界最大規模の風力発電所を建設し、かわりに福島第一・第二の原子炉10基すべて廃炉にする――というプランだ。
本誌はこれまで、風力発電や太陽光発電がコストや発電量の面で原発の代替にはなり得ないことを詳細に分析してきた。
が、この原発周辺部に限っては、唯一、それが可能な条件がいくつも重なっているのだ。そのうちの代表的な2つを紹介しよう。
【1】日本有数の「風況」
福島県は風力発電所の有数の適地である。平地や丘陵地の多くで事業化可能な平均5m/秒以上の風が吹く(地上高70mで計測)。
原発20km圏の多くが建設に最適な6~8m/秒だ。平地でもほぼ全域で5m/秒を超える。
また、冬は山風、夏は海風が吹くことで、年間を通じて風量の変動が小さい。
現に区域近くには風車14基を擁する桧山高原風力発電所があり、約80km離れた郡山布引高原風力発電所は年間発電量1億2500万kWhと国内最大級だ。
【2】国内唯一の“メガ用地”
避難区域の面積は約628平方km(海上を除く)。
ざっというと半分が平地で半分が標高1000m以下の丘陵地(高原)という、ほぼ全域に風車を建設できる好立地条件である。これだけの広さで、この条件の土地は国内には他にない。
また、海外の風力発電所では低周波による騒音被害、健康被害が問題化している。防ぐためには風車から住宅地まで最低500m、できれば1km離すことが望ましいとされる。巨大な用地であれば難なく可能だ。
※週刊ポスト2011年6月17日号