おぐにあやこ氏は1966年大阪生まれ。元毎日新聞記者。夫の転勤を機に退社し、2007年夏より夫、小学生の息子と共にワシントンDC郊外に在住。著者に『ベイビーパッカーでいこう!』や週刊ポスト連載をまとめた『アメリカなう。』などがある。おぐに氏によると、ワシントンDC界隈にいる日本人駐在員の妻は、故郷へのお土産選びに頭を悩ませているそうだ。
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アメリカでは、もうすぐ夏休み。移民友だちはみんな、「里帰り帰国」の準備に忙しい。中でも大変なのが、故郷へのお土産選びだ。だって、アメリカならではの品で、みんなに喜んでもらえるモノなんて、なかなか無いんだもん。
歴史が短い国なので、民芸品はいまひとつ。食べ物は大味。今さらオバマTシャツもないだろうし、自由の女神やホワイトハウスの絵柄の入ったマグカップなんて、ホンネをいえば、誰がほしがるだろう? そんなわけで先日、「里帰り帰国のときアメリカ土産に何を買うか?」という話題で盛り上がった。
「日本土産なら、折り紙や民芸品、上品なお菓子などいくらでも思いつくけど、逆に、日本人に喜ばれるアメリカ土産って難しい~。たいていのモノは日本でも手に入るし、食べ物なんか間違いなく、日本のモノのほうが美味しいもん」。
思わずアメリカ人の友だちの前で本音を漏らしたら、イラン人のゾラも、「分かるわ。イラン人のファッションってヨーロッパ志向だから、アメリカの服なんか喜んでもらえないのよ」。あっちゃー。アメリカ人の友人たちは明らかにムッとしてるよ~。
気遣いのできる台湾人のセリナが、あわててフォローに入った。「いえいえ、アメリカにだって素敵な土産モノがあるわ。たとえば、サプリメントなんてどう? 種類も多いし、台湾で買うよりずーっと安いもの。ビタミン剤とか私、山盛り買って帰って配りまくるわよ」
うーん。冷静に考えたら、アメリカの歴史や文化と何の関係もないサプリメントぐらいしか土産になるモノがない、って話で、全然フォローになってないぞ。それでも、アメリカの友人たちは「サプリメント=アメリカ土産」という発想が面白かったらしく、「この国ってそんなにサプリメントが安いかな?」などとうれしそうに聞いてくる。
そりゃねえ。普段の食事で野菜を食べないからって、子供にビタミン剤を平気で飲ませる国だもの。おまけに医療費がとんでもなく高いから、サプリメントで病気予防するしかないし。ここまでサプリメント市場が巨大化すれば、単価が安くなるのも当然よね。
※週刊ポスト2011年6月17日号