地デジ完全移行の「7月24日」が迫っている。総務省は今年3月、「地デジ普及率95%」と発表したが、実はこの数字、80歳以上の高齢者世帯260万件が除外された数字なのだ。
となれば、「95%」という数字が途端に眉唾ものとなってくるが、地デジ化の関係者はどう見ているのか。自治体から依頼され、週末ごとに高齢者に地デジ化への対応を説明している関西在住のボランティア男性によれば、これまで訪問した高齢者世帯のうち、約6割が地デジに未対応だという。
「年金暮らしなので新しい受信機器を購入したり、アンテナを据えたりする費用は出せない。そもそも地デジとは何かが理解できない高齢者も多く、“最後は国が何とかしてくれるんでしょ”と興味を示さない人もいる。
こちらの説明を聞いてくれる高齢者はまだ助かります。足を運んでも、『新手のオレオレ詐欺か』と思われてドアすら開けてもらえないケースも珍しくない。総務省調査がなぜ80歳以上を無視したのか、まったく理解できない」
この高齢者世帯への普及の遅れこそ、全国の自治体担当者が最も頭を痛めている問題である。都内のある区には、地デジに関する相談が4月に294件寄せられたが、うち212件が60歳以上からのものだった。大半は、「地デジ未対応だが、新たな受信機器を買い替える余裕がない」といった内容だという。
「このままでは7月24日に高齢者世帯からテレビが取り上げられ、パニックが起きる可能性があります。高齢者の心身両面への悪影響を真剣に心配しています」(同区の担当職員)
普及の一番遅れているとされる260万の高齢者世帯を、あえて調査対象から外しているのは、母集団のごまかしに他ならない。
※週刊ポスト2011年6月17日号