マンションのターミナルバリュー(最終価値、残存価値)がマイナスに近づくケースが続出している。日本では建物の法定耐用年数は重量鉄骨造りが34年、鉄筋コンクリート造りが47年だが、そのルールがはっきりしていないため、住民の一部が反対して建て替えができなかったり、積立金だけでは大規模修繕もままならないといった理由でターミナルバリューがマイナスに近づいていく。ところが経営コンサルタントの大前研一氏は、欧米では「築50年」の物件が高値で取引されると説明し、日本との違いを指摘する。
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欧米の場合、マンションは「永遠の資産」という発想が前提にあり、パリ、ロンドン、ニューヨークなどでは50年前に建ったマンションが今でも高い値段で売買されている。同じ地域でも新築マンションのほうが高いとは限らない。たとえば、マンハッタンのセントラルパークに面したエリアのマンションは大半が築50年以上だが、1戸2億~5億円から値下がりする気配がない。
「永遠の資産」だから、欧米のマンションは室内を大改装するのが当たり前だ。外観は古くても部屋の中は非常にモダンでピカピカになっている。
日本では、あれほどお金をかけてマンションの部屋をリノベーションするのは見たことがない。壁紙や床を張り替える程度である。理由は簡単だ。日本のマンションは50年経ったら建て替えなければならないから、わざわざ30~40年経った物件に大金をかけてリノベーションする物好きはいないのである。
※週刊ポスト2011年6月17日号