震災復興の象徴となるべき注目球団が、深刻な不振にあえいでいる。Cクラスに沈むチーム状況に加え、開幕以降すでに2度も行なわれた“粛清”とも受け取られかねないコーチ人事……。今、東北楽天イーグルスの内部で何が起こっているのか。
「打撃コーチに昇格したはずなのに、本西さんは周りに“シーズンオフは俺に詰め腹を切れということか……”と漏らしている。まさに今の楽天の歪みを凝縮したかのような人事です」
こうため息まじりに語るのは、楽天の球団関係者である。シーズン序盤こそ健闘していた楽天だが、その後はジリ貧。6月4日にはとうとう最下位に沈んでしまった(6月8日終了時点では5位)。投手陣は防御率3.10と悪くない数字をキープしているが、打撃部門の不振は深刻。チーム打率は2割3分1厘、得点も12球団中最下位(6月8日終了時点)に低迷している。
そこで取られたのが、早くも今季2度目となるコーチ陣のテコ入れだった。6月5日に突然発表された新人事の主な内容は、田淵幸一ヘッド兼打撃コーチのヘッド専任、そして本西厚博打撃コーチ補佐の打撃コーチへの昇格だった。
球団は「ヘッド職に専念」と説明したが、どうみても更迭人事。田淵コーチ自身もショックを隠しきれない様子で、「新人事発表の日はいつものケージ裏ではなく、遠く離れた外野フェンス際で、大きな体を小さくしてシュンとしていました」(スポーツ紙記者)という。
しかしこれはドラスティックな改革を望む三木谷浩史オーナーと星野仙一監督との攻防の結果の「妥協点」だったようだ。前出の楽天関係者がいう。
「田淵さんには当初2軍行きの可能性もあった。三木谷さんは“不振の原因は直ちに取り除くべし”という考えで、当然ながら打撃不振の責任は打撃コーチが取るべきと考えた。三木谷さんには、球団創設したばかりの田尾監督時代に、山下ヘッドと駒田打撃コーチをシーズン中に即刻2軍行きにした“実績”もある。しかし、星野監督が“それだけは”と拒否し、打撃コーチ解任で落ち着いた」
そもそも田淵氏の指導ぶりは選手たちから大いに不評を買っていた。あるパ・リーグ関係者がいう。
「田淵さんの肝いりで連れてきたアドバイザーによる骨盤打法も選手たちからは非常に評判が悪かった。しかも試合中に出す指示といえば“初球から狙っていけ”の一点張り。そもそも星野監督自身、田淵さんの打撃理論を買っていたわけではない。
阪神時代、そしてWBCの日本代表監督のときも星野監督は必ず田淵さんを側に置いた。要はいつも近くにいてほしいお友達なんです。選手の間では、田淵さんは“監督のグチ聞き担当”とも揶揄されている。打撃コーチを外したのは、オフに田淵さんの責任回避をするためと見られている。本西さんは、いわば人身御供ですよ」
もともと本西新打撃コーチは、オリックスでの現役時代にイチロー、田口壮とともに鉄壁の外野を組んだ「守備の人」である。裏事情を知る彼が、“昇格”を嘆くのも無理はない。
※週刊ポスト2011年6月24日号