「1億ドルの投資は失敗」。地元ボストンのメディアは右肘の手術に踏み切ったレッドソックス・松坂大輔について「彼のキャリアは終わった」とこき下ろした。
松坂が挑んだ「トミー・ジョン手術」は側副靭帯再建手術の別名で、初めて同手術を受けた元ヤンキースの通算288勝左腕の名にちなむ。成功率は9割といわれ、復帰までに約1年を要する。来年が6年契約の最終年である松坂はまさしく正念場を迎える。
手術の影響は松坂本人に留まらない。メジャー挑戦を夢見る日本人投手には厳しい未来が待っている、と見るのはMLBアナリストで『松坂大輔に120億円の価値はあったのか』著者の古内義明氏だ。
「日本の高校生を狙ったメジャーのスカウトたちの甲子園詣では、松坂が優勝投手となった1998年から本格化しました。高校生が炎天下で連投することは彼らには理解できない。松坂の故障によって、今後、甲子園で活躍した投手は30歳を迎えるころに“勤続疲労”がたたって潰れるリスクが高いと判断されかねない。ダルビッシュや田中将大への評価も無縁ではありません」
レッドソックスがポスティングシステム(入札制度)で投じた額は約60億円(当時)で、所属先の西武に渡った。ダルビッシュクラスでも球団側は最低30億円くらいほしいところだが、松坂の失敗で相場の低下は避けられないという。
松坂の1年にわたる長期のリハビリには“内助の功”が欠かせない。
「倫世夫人は3児の子育てに忙しくても夫の栄養管理に手を抜いていません。パナソニックとタイアップした育児ブログからも、夫婦仲の良さは伝わってきます」(MLB担当記者)
故障のたびに子どもができる、と揶揄されてきた松坂に対しては、「今回の長期離脱で4人目は確実だ」と口さがないチームメイトもいるという。
しかし、トミー・ジョンは1976年に復帰し10勝し、翌1977年にはなんと20勝。術後15年も現役を続けて勝ち星を重ねた。古内氏も期待を込める。
「松井秀喜も左膝手術からの復帰時にはヤンキースタジアムでスタンディングオベーションが起きました。2007年のワールドシリーズ優勝は15勝した松坂なしには不可能だった。カムバック・ストーリーが大好きなアメリカ人ファンを熱狂させる復活劇を演じてほしい」
※週刊ポスト2011年6月24日号