【書評】『白人はイルカを食べてもOKで日本人はNGの本当の理由』
吉岡逸夫著・講談社+α新書・880円(税込)
* * *
本書の表紙を開くと、鮮血に染まった海岸に横たわる多数のイルカがいきなり目に飛び込んでくる。イルカ漁で有名な和歌山県太地町の写真ではない。デンマーク自治領、フェロー諸島で行なわれている追い込み漁を写したものだ。
アカデミー賞を受賞した映画『ザ・コーヴ』で、太地町の人々は極悪人のように描かれたが、この映画にフェロー諸島のイルカ漁は一切出てこない。
〈今回のイルカ漁への非難、捕鯨への批判を見て、そこに白人たちの差別意識を感じるのは私だけだろうか〉
本書では、イルカ保護活動家らへインタビューを行ない、太地町とフェロー諸島の扱いの違いを比較し、彼らの傲慢さがどこから生まれてくるのかを検証していく。
シー・シェパード幹部のスコット・ウェスト氏はこう述べている。
〈イルカは牛などに比べて人間に近い。われわれと同じような複雑な頭脳と形態を持っている。彼らは文化的な共同体を持ち、自身の言葉や歴史を持っているから人間に近い。他の家畜とは違う〉
イルカは人間と同じだとする“イルカ教”のカルトも同然であり、科学的根拠はどこにもない。
著者は、白人はイルカ漁がOKで日本人はNGの理由として、差別や寄付金目的のほか、日本側のPR不足を挙げ、苦言も呈する。
東日本大震災の発生時、岩手県にいたウェスト氏らシー・シェパードのメンバーも被災し、住民や警察の支援で無事避難できたことが報道された。ウェスト氏は手記で「我々に向けられた親切と寛容さを、書きつくすことはできない」と述べている。寄付金集めが目的で日本叩きをしている連中でも、日本人は差別したりはしないのだ。
※SAPIO2011年6月15日号