5月末に総務省が発表した4月の全国消費者物価指数は、生鮮食品を除いた総合指数が2年4か月ぶりに上昇。値上がりした項目は全体の3割以上に及んだ。
そしてこの“値上がり感”の原因は身近なところにもあった。最近、スーパーやドラッグストアの「特売チラシ」が激減しているのだ。全国約1000人のモニターから約1100チェーン・3万店舗のチラシを毎週1万枚集めて、特売数&価格調査を行う、チラシレポートの澤田英社長がいう。
「例年と比べてチラシの枚数が地域により半分もしくは3分の1になっています。東北地方だけでなく、全国的な流れです。この20年間でこれほど減ったことはなく、特に震災直後の減少幅には正直、今後どうなってしまうかと思いましたね」
『スーパーの裏側』(東洋経済新報社)や『日本の農業は“風評被害”に負けない』(アスキー・メディアワークス)著者の河岸宏和さんは、特売が減った裏側にスーパーの計算があるという。
「日本のスーパーと欧米スーパー(例えばアメリカのウォルマートなど。日本では西友を子会社化している)のシステムはまったく違います。ウォルマートでは『Everyday Low Price』を掲げ、チラシ代や人件費を削って、毎日安い価格で売るというシステムを採用しています。ところが日本では、特売チラシを配って特定の日に目玉商品を大きく値下げすることで多くの客を集め、安い商品だけでなく、高い商品や定価の商品まで買ってもらって売り上げを増やす『特売システム』が特徴なんです。
しかし震災でモノが足りないという“品薄感”が広まったため、あえて値段を下げなくても消費者がスーパーでモノを買うようになった。顕著なのがヨーグルト。品薄感があったから、自然に特売が減って値段も上がりました」
確かに、チラシレポートが調べているヨーグルト3商品の価格を、同じく年末年始と5月第3週で比べてみると、特売数はすべて減っており、価格も1商品はほぼ横ばい、2商品は上昇していた。
「だから、特売を減らしてもスーパーは平気なんです。実際、震災後のスーパーの利益率は軒並み上がっているんですよ。とくに震災以降はこうした傾向が顕著です。だからこれまで特売で買っていた消費者には、割高感があると思います」(河岸さん)
※女性セブン2011年6月23日号