2006~2009年の野村監督時代には少しずつ戦力の底上げが行なわれ、最終年の09年には球団最高の2位に躍進。「今と比べれば、三木谷浩史オーナーが現場に介入することもあまり見られなかった」(楽天球団関係者)というが、成績が上がらなくなれば、現場を知らないトップが口を出し始めるのは世の常である。
「とくに三木谷氏は費用対効果を重視する経営者。星野仙一監督を1億5000万円で招聘したうえ、監督の要望通り、メジャー組の岩村明憲と松井稼頭央をそれぞれ年俸1億5000万円の2年契約で獲得。田淵幸一氏をヘッドに据えた。それだけ星野監督に投資しただけに、いまのチーム不振に業を煮やしている」(前出・楽天関係者)
コーチ人事だけではない。三木谷氏の意を受けたフロントの現場介入は多方面で本格化している。5月上旬には星野監督を始めコーチ陣に話を通さぬまま主力選手にレポート提出を厳命。選手たちからは「俺たちはサラリーマンか」との声も上がったという。13日からのロッテ3連戦の前には、相手投手の映像が編集されたDVDを配布して予習を義務づけたと報じられた。
さらには6月1日、島田亨球団社長の主導で「チーム強化部」が新設され、島田社長が自ら部長を兼任。投打のフォーム動作の解析を中心にデータを有効活用することになった。
メキシカンリーグで活躍するルイス・アルフォンソ・ガルシア内野手の獲得が6日に発表された際も、星野監督は「編成(の仕事)です。おれは知らない」と、不信感を露わにした。
「現場主義」にこだわる星野監督にとってフロントの現場介入は許し難い行為だ。そもそもフロントとの良好な関係を築くことにおいては球界でも右に出る者はいないとされてきた星野監督だが、三木谷氏相手ではこれまでといささか勝手が違うようだ。あるプロ野球関係者がいう。
「星野さんといえば、球界でも“ジジ殺し”として有名だった。中日時代は加藤巳一郎オーナー、阪神時代は久万俊二郎オーナーという長老を味方につけ、人事権のすべてを掌握していた。しかし楽天の三木谷氏のような年下のIT実業家には、これまでのような籠絡術が使えない。頭越しの人事介入に腹を立てているうえ、チームも勝てない。星野監督の苛立ちも頂点に達しているはず」
一方で、三木谷氏も心中は穏やかでないようだ。
「ソフトバンクの孫正義会長は、震災復興でも100億円の義捐金を打ち出し、球団も首位をひた走っている。楽天は被災地・仙台の球団であるにもかかわらず、注目はすべて孫さんに持って行かれている。経営者としての焦りも相当あるのでは」(前出・楽天関係者)
それぞれのジレンマを抱えつつ、46歳の球団オーナーと64歳の指揮官はもはや一触即発の状態となっている。
※週刊ポスト2011年6月24日号