総務省調査の「地デジ普及率95%」はごまかしだと指摘した本誌前号は大きな反響を呼んだ。それでも電波行政を担当する総務官僚はこう嘯(うそぶ)いてみせた。「ポストの記事は痛いところをついていたが、今さら地デジ移行の延期など絶対にあり得ない」ならば、彼らが間違いを認めるまで地デジ化の強行がいかに罪深いものであるかを徹底的に報じていく。
前号では総務省調査が無視した80歳以上の高齢者世帯や低所得者層などで、地デジ普及が進まない現実をレポートしたが、地デジ難民はまだまだいる。全国の中小企業では地デジ未対応の事業所が相当数存在している。編集部に寄せられた憤りに満ちた声を紹介しよう。
「この不景気の中、地デジ化のために出費する余裕などない。本社と支店を合わせて社内にアナログテレビは10数台あるが、買い替えやアンテナ設置などで数十万円ものカネを出せるわけがない。仕事の上で欠かせない気象情報などは今後、ラジオで収集するようにと従業員には伝えてある」(神奈川県の工務店経営者)
全国の自治体でも地デジ化への対応は遅れている。総務省が6月3日に発表した数字では、今年3月末時点で都道府県・市区町村の全所管施設で地デジ化の対応を済ませているのは62%だけ。残りは「移行日までに準備を終える予定」と説明されているが、焦りを隠さない自治体関係者もいる。関西のある自治体の総務担当者がいう。
「役所や公民館など、地域住民が集うコミュニティ・スペースで、テレビの視聴ができなくなったとしましょう。そこに地震などの激甚災害が発生すれば、住民の避難行動に致命的なミスリードをもたらす恐れがあります。
すでに必要な予算は計上済みで、順次、学校や病院などの所管施設で対応を進めている最中ですが、当初の計画より遅れが出ている。急遽、受信機器の一部をリース調達に切り替えていますが、アナログ波停止までに間に合うか不安です」
自治体でさえドタバタの地デジ化を進めているのが現状なのだ。
※週刊ポスト2011年6月24日号