本誌は前号で、仙谷由人・官房副長官が「被災地視察」と称して長野県栄村を訪れた際、前日に被災地を素通りして近くの温泉宿に泊まり、同級生の内閣参与や元部下の知事らと温泉に浸かって宴会に興じていたことを報じた(関連記事参照)。もちろん税金で、である。
未曽有の大災害を前に、被災者に尻を向けて遊び呆ける「棄民政治」そのもので、経緯を知った地元政界から怒りの声が上がった。
現内閣で農水副大臣を務める篠原孝・代議士が、5月末に仙谷氏に宛てて厳重抗議する書簡を送っていたのである。そこには、こんな内容が書かれていた。
●仙谷氏が知事に「記者をゾロゾロ引き連れて栄村に行ってやるから、ひなびた温泉を用意しておけ」と指示したと聞いている。
●長野県連幹事長が同行する予定だったが、物見遊山には付き合えないと拒否。
●視察前日には閣僚からも「仙谷を長野駅で出迎え、記者団の前で『物見遊山には付き合えない』といってやれ」といわれた。
●避難所を通り越して温泉宿に泊まり、知事と一杯やるとは不謹慎極まりない。
――至極もっともな怒りである。被災者、国民の「世論」はまさにこの通りだろう。篠原氏は書簡について、「お答えできない」としたが、“大副長官”にはっきり物をいった勇気は大したものである。裏を返せば、仙谷氏の党内求心力など幻影にすぎないということだ。
また、仙谷氏は複数のダミー政治団体で政治資金を集め、そのカネで自分の息子の家賃を負担していたことが問題になった。同じことをもし小沢一郎氏がしたら、マスコミから「議員辞職が当然だ」と袋叩きにあう“重罪”である。
そういえば「自衛隊は暴力装置」なんて舌禍もあった。口が軽いのもこの人の特徴である。
※週刊ポスト2011年6月24日号