次期総理候補として名前にあがる枝野幸男・官房長官は国民的人気があるのだという。原発事故で連日、会見に奮闘したというのが理由らしいが、これこそとんでもない勘違いかマスコミのミスリードだ。
枝野官房長官その人こそ、東京電力と一緒になって事故の真相を隠し、国民を避難させずに無用の被曝に追い込んだ張本人だからである。
本誌スクープで、政府が隠した「3つの重大データ」が明らかになっている。第1は放射能拡散予測データの「SPEEDI」、第2が原発事故分析・予測の「ERSS」、第3が原発維持のために隠された「電力供給量データ」である。
いずれも国民の命を政権維持の踏み台にする許し難い情報隠蔽だが、今回本誌は、6月10日号で報じたERSSデータの詳細を入手した。
官邸に提出されたその資料には事故当日(3月11日)、すでに「炉心溶融(メルトダウン)」はもちろん、「下部炉心支持板破損」「原子炉容器破損」、すなわち核燃料を納めた原子炉圧力容器に穴があく「メルトスルー」が起きていたことがはっきり書かれている。
データには、それら事象による放射性物質(希ガスとヨウ素)の放出量の試算値まで記されていた。しかし政府は危険を隠し、適切な対策を取らなかった。
その責任者が枝野氏である。その間違いを糊塗するため、その後も「ただちに健康に影響はない」と避難を先送りし続け、無用な被曝者を大量に出した。この男が「次期総理」など、背筋が寒くなるばかりだ。
枝野氏は、記者会見で次期総理の下馬評を問われ、まんざらでもないニヤニヤ笑いを浮かべて、「私は菅内閣の官房長官ですから、菅総理を最後まで全力で支える」と語った。
もうこの時点で総理大臣の資格も、政府の要職を占める資格もない。内閣の要である官房長官の仕事は、国民に仕え、国家のために全力を尽くすことであり、死に体となった総理大臣を支えることではない。このセリフには、今も日々の生活さえままならない被災者や、2万人になんなんとする震災死者、いまだ発見されない8000人の行方不明者への思いなど微塵も感じられない。あるのは自分の保身と野心だけである。
福島県飯舘村村議の大谷友孝氏が怒る。
「枝野さんがポスト菅候補など、とんでもない。官邸の危機意識がゼロだったからこんな混乱に陥った。次の総理は菅さんの周りにいた人間はすべてダメです」
なお、枝野氏にも「政治とカネ」問題がある。本誌は2月11日号で「3つの献金」を問題にした。詳細は割愛するが、【1】岳父夫妻からの2650万円(贈与税逃れ疑惑)、【2】談合ゼネコン代表者から毎年献金、【3】生活費も残らない多額の本人献金(他に未報告の収入源があるか、政治資金を生活資金に流用している疑惑)――というものだ。これらも小沢一郎氏なら「強制起訴」だろう。
※週刊ポスト2011年6月24日号