世界保健機関(WHO)の国際がん研究機関(IARC)が、携帯電話の電磁波と発がん性の関連について、限定的ながらも「可能性がある」との分析結果を発表したのは5月末のこと。
NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルはいずれも「健康には影響を及ぼすものではない」等と回答したが、特に子供に携帯を持たせている親にとっては気が気でないだろう。
だが、「騒ぎすぎずに冷静に受け止めてほしい」と語るのは、IARCの疫学研究で委員を務めたこともある、首都大学東京大学院の多氣昌生教授である。
今回、IARCが携帯電話の危険性を分類したのは、5つのカテゴリーのうち危険度でいえば上から3番目に当た2B。これについて多氣教授は、「2Bは発がん性の可能性が“possibly(あるかもしれない)”というレベルで、2Aの“probably(可能性がある)”とは全然違う。発がん性の可能性を否定できない。だからその可能性が本当なのかどうかをもっと調べましょうというスタンスだ」と語る。
ちなみに2Bには他にコーヒーなども分類されている。少なくともこのレベルで「危険だ」と決めつけるのは、あまりにも短絡的だというのである。
「2Bになったのは、動物実験でも十分な証拠を示していないということ。ただ、そのデータが、携帯電話が現在のように普及する前の比較的初期のものなので、研究を続ける必要がありますね、ということなのでしょう」(前出・多氣教授)
IARCが「イヤホンとマイクを使うのも一案」と、ハンズフリーに言及したことについても多氣教授はこう指摘する。「要は気になる人は個人でこんなこともできますよ、といっているにすぎないのです」
今や体の一部となった携帯電話。もちろん安全だといいきれないが、ことさらに危険をあおるのもどうか。
※週刊ポスト2011年6月24日号